歳下って a ページ12
｢あろまさん！手繋ぎましょ！｣
｢いや…お前…街中だぞ…｣
って言いつつも、ちょっと寂しそうな顔されたら繋いじゃうんですけどね。
だって可愛くね？歳下の彼女が遠慮無く甘えてくんのよ？
付き合うきっかけはなんて言うか些細なことで、Aからの猛アプローチに負けたってだけ。
最初はこんなおっさんにこんな若い女が引っ付いてきやがって美人局か？ってぐらいの気持ちだった。でも全然違った。
あんまりにも素直な目で、私はあろまさんが好きなんです！って言い放った挙句、ポロポロ泣き出すもんだからなんかキュンってきてそのまんま恋人に。でも今は俺の方がメロメロってわけ。
｢今日はどこ行きます？私は新しく始まった映画が観たくて…！｣
｢いいじゃん。観にいこうぜ｣
肯定の言葉を返せば、パァア！って効果音とともにキラキラした背景が見える…気がする。
少女漫画のヒロインかよ。俺の一言でそんな顔するなんてすっげえ可愛いわ畜生。
まあ俺が脳内で可愛さに悶えてるなんて露知らず、Aはウキウキでさっきより俺の手を強く握ってニコニコ歩いてる。
あーーー、天使。一生離さん。
ギュッと強めに握り返せば、照れたように髪を耳にかけて、伺うみたいにチラッとこっちを見る。
あ、目が合った。
今度はギュンって効果音がつきそうな勢いで目を逸らしたのに、ちょっとだけ体をこっちに寄せてくるA。
この、ちょっと照れてるけど積極的に近付いてくるところになんて言うかもう心臓鷲掴みされてる。なんなら心臓痛いレベルよ。
｢…映画、ポップコーン買うつもりなら半分こしようぜ。｣
｢え！い、いいんですか！｣
｢おー、1人だとあの量あますべ｣
｢あます…？｣
｢あー、残るって意味。｣
ああ！って納得したのかまたニコニコ顔。
｢あろまさん！そしたら飲み物も1個買うだけにしときましょ！｣
｢んなもん1個づつ頼んで飲めばいいだろ｣
｢いや、いっぱい飲むとトイレ行きたくなるんで！飲み物も半分こ！｣
もう三十路も半ばのおじさんが彼女と飲み物まで半分こってなかなかインパクトあるだろうが。
って返せば、ちょっと眉間に皺寄せて寂しい顔しやがる。
コイツ、絶対俺がこの顔に弱いことに気付いてやがる。
｢わかったわかった。1個づつな？そんで半分こな？｣
｢はい！ありがとうございます！｣
俺もう三十路だぞ…って思いつつ、満面の笑みで言われたらもう逆らえん。
結局俺は、この歳下彼女に甘い。
続く
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