tune.33 ページ33
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かくん、と意識が落ちそうになり慌てて顔を上げる。ここどこだっけ、と記憶を掘り起こし、すぐに生徒会室であることを思い出す。
パソコンで作成中の報告書に視線をやると、きちんと書いた文章が突然途切れ「n」の字が連続して入力されていた。
キーボードから指を離し、溜息をつきながら「Delete」を押す。
「お疲れかな、Aちゃん」
肩が跳ねる。
声の主である天祥院さんは、そんな私を見てにこにこ笑っている。
「え、あ、すみません‥‥そういうわけでは」
書類を整理しながら、蓮巳さんが「そんな風には見えんぞ」と呆れたように言った。「ちゃんと睡眠はとっているのか」
「寝てはいますが」
「何時間?」
「‥‥ええと、6‥‥いや、昨日は5時間、ですかね‥‥」
「それはちゃんとした睡眠とは言わんッ!」
ひぇ、と内心縮こまる。
何かあると大体フォローしてくれる衣更くんは、今日はユニット練習で不在だ。荒ぶる副会長を宥める者はいない。会長はあまり期待できない。
「まぁまぁ、落ち着いてくださいませ、副会長さま。Aさんにも事情があるのでございましょう」
どうぞ、と差し出されたティーカップに鮮やかな紅茶が注がれる。また気遣わせてしまったようだ。申し訳ない。
「弓弦はこいつのこと甘やかしすぎ!
そんなんでボクらのことちゃんと守れるの? 何かあったらボーダーに文句言ってやる!」
「大丈夫です。トリガーを使えば体調不良は関係ないので」
「そういえば、戦うための身体が生身の他にあるんだっけ。ふふ、僕もトリガーを使えば自由に動き回れるようになるかな」
「生身は病弱ですがトリガーを使うことで走り回っている隊員もいるので、できなくはないと思いますよ。ただボーダーに入隊することが大前提ですが」
天祥院家にとって彼は大事な大事な御曹司だ。間違っても戦場に放り込むような危険な真似はしないだろうが。
それに彼がボーダーに入隊するなんて、個人的に心証はあまりよくない。完全に初対面の時の出来事が尾を引いている。
ボーダーは機密情報の塊だ。その内部に天祥院さんを入れるなんて、私だったら考えたくもないことである。何を抜き取られるかわかったもんじゃない。
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夏向(プロフ) - りんさん» コメントありがとうございます。めちゃくちゃ原動力になります!! (2021年5月16日 22時) (レス) id: d3650b90b8 (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - れいゆふさん» ありがとうございます。そういったコメントを頂けると作者冥利に尽きます…!! (2021年5月16日 22時) (レス) id: d3650b90b8 (このIDを非表示/違反報告)
りん - とても面白かったです!続きがとても楽しみです! (2021年5月16日 15時) (レス) id: 5a0e3d3105 (このIDを非表示/違反報告)
れいゆふ(プロフ) - めっちゃ好きです!更新楽しみにしております! (2021年5月12日 3時) (レス) id: e48528e707 (このIDを非表示/違反報告)
夏向(プロフ) - 星宙*°さん» ありがとうございます。感想めちゃくちゃ嬉しいです…!のんびり更新の上どこまで続くかわかりませんが、最後までお付き合い頂ければ幸いです^^ (2021年5月11日 22時) (レス) id: fd39a6918d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏向 | 作成日時:2021年3月31日 16時