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9 - 6 罪 ページ21

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「どうしてそんな顔をして此処におるんじゃ

辛気臭いのう」





珍しく嫌そうな顔をした零は、ぐだっと目の前に転がったAを棺桶からじっとり見下ろした。





「……」




「喋る気力もないのか、一層面倒じゃのう…


”我ら”はお主を拒絶できん
お主の大きな罪を抱えておるからのう」




「…その罪がないと、

零は私と一緒にいないわけ?」





そっぽを向いた後頭部に、零は『違う』とはっきり言った。






「……今のは意地悪じゃったのう、…許しとくれ


…確かに、我らがお主に対して罪を持っておることは事実じゃ
……みな、それを常に抱えて生きておる
…奏汰くんであれば、一層な」




「………零達の”罪”って何なの?


…私、零達に不満を感じたことなんかないよ
一緒にいてくれるだけでいいのに」





「みなそれぞれじゃよ


…Aの繰り返しを止められんのも
もしかしたら、この罪を償おうとしておるからかもしれんしな」





そう言った零は、笑みを消して、

伸ばした手で髪に触れる。






「…行くのかえ?週末

凛月の元へ」





びくっと肩が揺れた。



零は何も言わずにその答えを待つ。

何でも知っているように見えて、何も知らなかった。



今の、Aの気持ちも。

ただ黙って寄り添うことしか。





それが、自分の”罪”だと。





「…凛月って、”どっち”なの


”こっち側”だとしたら、どうして…?
……”こっち側”だったら、どうしよう、私…」






ばっと顔を上げたAの頭をそっと撫で、頬まで手を滑らす。



どんな気持ちなんだろう、零は。

ただ目を細めて、泣きそうな目の前の表情を見つめて。





「…大丈夫じゃよ


大丈夫じゃ、A」





覆い隠すように、抱き寄せた。


カーテンが締まった暗い部屋の中で。






「…凛月は優しい子じゃよ


最初は多少苦しいかもしれん
…でも、きっと凛月なら、Aを助けてくれるはずじゃ」





棺桶の底で鳴った携帯を横目に、

零は尚、Aから離れなかった。






「もし辛かったなら、来ればよい


それくらいならば、年寄りでもできるからのう」





そこでまた、零は笑った。


抱き寄せられたAには、見えないけれど。





Aが落ち着くまで、傍にいた。





その時間は永遠のようで

たった、夜がくるまでのほんの数時間のことだった。








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Story 10『 memory trace 』→←9 - 5 悪循環



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まひる(プロフ) - 雪羅さん» ありがとうございます…!!妄想のままに描いているので賛否両論あると思いますが…(^-^; そういっていただけると嬉しいですー!(*´ω`)ありがとうございます(*’ー’*)ノ (2019年10月13日 11時) (レス) id: f98a768e19 (このIDを非表示/違反報告)
雪羅(プロフ) - 前からこの作品見続けています!繊細で綺麗な表現とか、儚い世界観とか、謎の多いキャラクターとか、すごく作り込まれていてまるでドラマを見ているようでした!これからも頑張ってください! (2019年10月13日 9時) (レス) id: 227c03626a (このIDを非表示/違反報告)
まひる(プロフ) - ありまさん» ありがとうございます…!そういったコメント頂けると、嬉しいです(*^-^*) (2019年10月9日 22時) (レス) id: f98a768e19 (このIDを非表示/違反報告)
ありま(プロフ) - この作品の雰囲気がとても好きです。 (2019年10月9日 21時) (レス) id: ef20a5c3d2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まひる | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2019年9月2日 9時

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