第六十一幕『遠ひ記憶の在処』 ページ5
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「チアキ
カナタ」
ぽつりと、そう呼んでみた。
人気のない海には、それはただ掻き消される。
でも何故か、静かな波はそれに応えるようだった。
「…やっぱいないかな」
後ろを向いて、また歩こうとすると、
するりと肩に手が回ってくる。
レオはそれに振り向かず、笑った。
「………、誰？おまえ」
揺れるレオの髪束の尻尾を見て、そいつは緑のスカーフを海風に揺らせた。
「…高峯翠
覚えてないだろうけど」
「…んー、わからん」
「はは、知ってました」
乾いた笑いを浮かべた翠が、振り向かないレオの背中に向かって声をかけ、真逆の海の方へ歩きだした。
「……
隊長っすよね
案内しますよ、多分、貴方一人だと、見つかんないっすから」
ようやく振り返ったレオが、歩いていった翠の背中に口を開く。
「おれには見えないところに、チアキはいるの？」
「…此処は、俺達の家
貴方達の、焼け落ちた”城”と、同じような場所っすから」
説明になってそうで、なっていない答え。
歩いてきた道には、白く霧が立ち込めていた。
「ふぅん
…おまえは見えないんじゃないの？」
レオは1歩ずつ、警戒めに重い足を進める。
そんなレオに、翠は至って普通に言った。
「そうっすね
感じられるだけ、っていうのも、ほとんど見えてねえのと一緒だし
不便っすよ
…あんたらみたいな人を、善か悪か判断するのにも」
互いの表情は、歩いているし、位置関係が縦だから見えない。
けれど、容易に想像はできた。
「…」
「…冗談っすけど
…今回は貴方を追い詰める任務じゃないですし
……それに、今はお客さんだから」
だんだん、翠の足取りも重くなっていく。
二人で、長い浜辺をだんまりと歩いた。
「カナタは、もういるのか」
不意に、レオがそう訊いた。
それに、翠は曖昧な答えを出した。
「……さあ
気配はするんすけど
…隊長と話してる様子ないし」
「ふぅん」
毎度同じような反応で、ぼんやりとレオは海の方ばかり見ている。
いつの間にか海は、砂浜とはうって代わって、霧がなく、しかも空は赤ではなかった。
美しく、光輝く海だった。
「…おまえの海は、こんななの？」
レオの言葉に流されるように海を見て、翠は頷く。
「そうっすよ
…あの人が大好きな海、らしいっす」
翠の瞳は、妙に青く輝いていた。
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まひる(プロフ) - 朔さん» 長かったのに最後までありがとうございました(/´△`＼)そう言っていただけると本当に嬉しいです！新作も是非読んでいただければと思います(*’ｰ’*)ﾉありがとうございました(人*´∀｀) (2019年8月1日 21時) (
レス) id: f98a768e19 (このIDを非表示/違反報告)
朔(プロフ) - 最終章までお疲れさまでした。最初から最後まで楽しく読ませてもらいました。内容もしっかりしてて読んでて凄く楽しかったです！新作、楽しみに待っています！ (2019年8月1日 19時) (レス) id: ba31d19644 (このIDを非表示/違反報告)
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