夢見る胡蝶 ページ14
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「Aちゃん」
伸ばされた手に、違う手が触れた。
僅かな温もりに、僅かな冷たさ。
「…ナルさん？」
Aの頬には、蒼い紋様が出来ていた。
紋様は、妖が本来の力を解放したときに体の表に出る妖力、又は霊力根。
数を重ねる毎に、皮膚にはそれが濃く鮮明に刻まれるようになる。
「…、アタシに霊力をくれないかしら」
笑ったナッちゃんに、Aが目を丸くする。
「妖力解放、ですか…？
……いいんですか？…力を使っても」
控えめに訊くAに、ナルくんは尚微笑み、細いAを抱き締めた。
「アタシはもう、大丈夫
もう、アタシの中には完全にあの子がいる
…今は、Aちゃんもいる
妖に呑まれる心配はないわ
アタシにもう、迷いはないもの」
「…ナルさ、」
「アタシはアタシにやれる最高のことをする
今アタシがすべきことは、アタシも全力を出して戦うことだけ」
「鳴上様
…お迎えに上がりました
貴方のお相手は、この私が努めさせていただきます
どうぞ、殺す気で」
深々と腰を折ったそいつに、ナッちゃんはAから離れ、Aの前に出て、胸元から小刀を二本、取り出した。
「ようやくアタシは、あんたを表に出してあげられる
…我は汝、汝は我
森より出でし胡蝶今乱舞す
喝采せよ、舞い踊る美しき紫蝶に
”胡蝶之夢”」
剣二本の刃先が紫に淡く光る。
閉じていたナッちゃんの瞳が、赤く澱んだ。
ナッちゃんの回りに蝶が飛び交う。
光で出来ているそれは、自らの妖力の無限さを物語るように。
「我が身を以て命ず
我が力の半身を他の妖へ
我が妖に望みを叶うる大いなる力を与えよ」
Aもそれに続いて詠唱する。
尚力を増すナッちゃんに、セッちゃんでさえも驚きを隠せないようだった。
何せ、ナッちゃんが妖力解放をするのはこれまで一度もなかったから。
「…戦いたくはないけれど」
背を向けたまま、ナッちゃんは呟く。
Aはそれに顔を上げた。
「…あんた達の為だしね
この命も力も、喜んで懸けてやるわ」
両手を広げたナッちゃんの指先に、蝶が一匹止まった。
「…、…アタシはあの子が大好きだった
でも今は、A、あんたがいる
Aもすっごく大好きよ
…なんて
ずっと言いたかったのよ、これでも」
飛び立った蝶と共に
ナッちゃんはそう、振り返り様に笑って見せた。
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まひる(プロフ) - 朔さん» 長かったのに最後までありがとうございました(/´△`＼)そう言っていただけると本当に嬉しいです！新作も是非読んでいただければと思います(*’ｰ’*)ﾉありがとうございました(人*´∀｀) (2019年8月1日 21時) (
レス) id: f98a768e19 (このIDを非表示/違反報告)
朔(プロフ) - 最終章までお疲れさまでした。最初から最後まで楽しく読ませてもらいました。内容もしっかりしてて読んでて凄く楽しかったです！新作、楽しみに待っています！ (2019年8月1日 19時) (レス) id: ba31d19644 (このIDを非表示/違反報告)
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