6 - 5 変わり目 ページ41
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『感じて』
『聴いて』
『生まれ』
『響く』
部屋いっぱいに響く歌声を、耳だけで聴いている。
目を閉じて、音と空気を感じている。
『夢の音を』
『僕らと君を繋ぐシンフォニア』
相変わらず手にした録音機には、色んなユニットの曲が入っている。
ユニット毎にひとつずつ、それはある。
『もしも君が泣いていたら』
目を開けると、目の前には”手品師”。
手渡された折り紙は、一瞬で薔薇になった。
「わ、」
『その涙拭ってあげよう』
『だからほんのすこしだけ』
微笑んだ少年達は、見るものを元気付けるように歌う。
自らも楽しそうに歌う。
『顔をあげて』
ぴょこん、とピンクの髪が目の前で動く。
頬をぴんくに染めて、笑う。
どのユニットにも、そのユニットにしかない個性、美点がある。
圧倒的センスであったり、明るさであったり
迫力であったり、美しさであったり。
『運命と今が繋がる音』
僅かに体が傾いたのを見て、音楽を止める。
青白い頬から、汗が伝った。
「一旦休憩にしよう
飲み物、何がいい？買ってくるよ」
「お手伝い致しますよ
坊ちゃまも、行きましょう」
「え”っ僕も！？何でー！？」
「喧しい
Aさまに失礼でしょう
早くしてくださいまし、休憩時間が終わってしまいます」
ぱたぱたと、その部屋を後にする。
”いつも通り”笑った渉と、英智を置いて。
練習室から離れて、急に静かになったピンク頭は小さな声で言った。
「…会長、まだ体調悪いのかな」
いつもはわあわあと煩いわりに、気遣いは良くできる後輩だった。
英智以外には言葉が多少宜しくないが。
「忙しかったからね、最近」
Trickstarに振り回され、英智は何か変わったようで
表情は心なしか前より明るくなったようにも見えなくもない。
「今日はスポーツドリンクにしよっか
水よりも栄養あるしね」
軽く笑って、腰から下げたレコード等諸々が入った小さな鞄からスマホを取り出すと
何やらメッセージが届いているようでチカチカ光っている。
「Aさま？
どうかなさいましたか？」
「ううん
…あっという間に夏だなあ、って」
開かないままそれをまた鞄にねじ込み、
水滴がしたたるペットボトルを手に、道を折り返す。
空は自棄に青く輝いて
頬を伝った雫が一滴、ぽつりと落ちた。
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