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Story 6『 captive doll 』 ページ36
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手を引かれて、彼の導くまま。
特に、自分から何処行きたい、何したい、って言うんでもない。
彼は、自然と行きたいところに連れていってくれるから。
「奏汰くんと、海、行ったんでしょ？」
シナリオに沿って、彼も動く。
何処に行くのかも、しっている。
けれど、不思議と飽きはしない。
「…え？
うん、昨日ね」
「Aちゃんと海に行きたかったのは俺だったんだけど…
まあしょうがないね〜」
くすくすと笑う彼に手を引かれて
夕焼け空の中、階段を上る。
”本当なら”
彼と最後に行くのは、海だった。
「ほら、ここ
俺の一番好きな場所」
階段の先に見えた、水平線。
赤く、きらきら輝いた。
「…、」
昨日の、海の出来事。
縛られた、過去の記憶。
駆け巡るのは、寂しさ。
ふわりと吹いた風は、柔らかい塩の薫りを
目映い夏の、訪れを
静かに、告げようとしていた。
──作曲に詰まったら、海を見るんだ
─高くて、人がいないから静かで、綺麗だっ
「…綺麗、だね」
──今私が、すべきことは？
「Aちゃん、本当に好きなんだね、海」
海が好きなのは、”私じゃない”。
──綺麗だねぇ、海。
これも、過去に囚われているから。
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