Story 4『 heart reset 』 ページ22
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月光だけに照らされて、明かりも何もつけずに。
ピアノの音は、開けた窓から美しく響く。
重いモノを、全部取り去ってくれそうなそれは
これまでにも、今も
しっかりと、心に響いてきた。
シナリオが何度変わったって
この音は、変わらない。
凛月が弾くピアノの音が
…記憶に残る彼らの歌声が
変わることはなかった。
今まで何を見ていたんだろう
何に、気をとられていたんだろう
このピアノの不変的な美しさを、どうして今更思い知っているんだろう
『シナリオ』が変わりやすいものであり、
変わりにくいものでもある、なんてことを知りながら。
「Aはさ」
ピアノの音に包まれながら、その声に耳を澄ませて。
「王さま、好き？」
その声に、瞬きをした。
彼は笑ったまま、続ける。
「早く戻ってきてほしいなーって、思う？」
繰り返したって、
彼はもう、”完全には”戻らない。
壊れたものを、完全に直すなんて不可能だ。
「……うん、
…もちろん」
繰り返すほど、諦めの気持ちは強くなっている。
けれど、昔の愛しい景色は、笑顔は
私を捉えて離さない。
「…レオは、大事だから
…
黙ったまま、ピアノを弾きながら
凛月はゆっくり目を閉じて、首を振った。
「…俺たちじゃない
Aだよ」
そう言って、口角を上げて。
響いた音は寂しく、宵闇に消えた。
「…自分のこと、もっと大事にしなきゃ
…いつか壊れちゃうよ
壊れたら、もう一生、その通りには直んないんだから」
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───『壊れたもの』は、本当に直らない？
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