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「十六歳の女の子。アイドルで、レッスン中に倒れて苦しみだしたって。症状を聞いたらゲーム病みたい。バグスターの切除手術は飛彩があたってる。大我もバグスターの方に向かうって。幸い弱いバグスターみたいだから、これ以上の応援は大丈夫。とにかく彼女の安静に集中して」
「オッケー」
CRも兼任する僕に、休憩などあってないようなものだ。こうして急患の連絡があれば直ちに動かなければならない。そしてとにかく、その患者の無事を願うばかりである。
運び込まれてきた患者の顔を見て、僕は自分の目を疑った。
「……あれ？あの子、さっき見た画像のピンクの子じゃ」
「愛花ちゃん……？」
呆然と呟く僕の横を、小さな何かが通り抜ける。最初は状況を把握しきれていなかった僕も、女性の悲痛な声で自身の意識を取り戻した。
「愛花！」
「こ、困ります！落ち着くまでロビーで待っててください」
それでもまだ、半分夢の中にいるような気分だ。看護師達の制止を振り切って中へ入って来た彼女は、正しく西城季実子で。僕の手で動きを止められた彼女は必死に患者の名を。仲間の名を叫んでいるのだ。更に後から走ってきたもう一人のメンバー、ジェイミーをポッピーが止め、貴利矢さんと三人がかりで二人を外に出し落ち着かせる。
「心配なのは分かりますが、今は優秀な医師が切除手術にあたってます。必ず成功しますから、もう少し待っていて下さい」
テレビで見る花のような笑顔とうってかわって、二人の顔は心配からかとても歪んでいた。未だに目の前に推しアイドル達がいることは信じられないが、これは現実だ。西城季実子は俯いていた顔を上げ僕を見上げると、眉尻を下げ震えた声で僕に問う。
「あの、愛花は大丈夫なんですか……？治るんですか？」
「手術自体はきっと成功すると思います。まだ初期段階みたいなので。ただ、ゲーム病はストレスから発症するものなんです。バグスターを切除して倒したとしても、ストレスの根本を断ち切らないと再発する恐れがあります」
「再発……」
「何か、彼女のストレスの原因に心当たりはありませんか？」
ジェイミーと西城季実子が二人顔を見合わせる。恐らく共通の心当たりが見つかったのだろう。ジェイミーが「実は」と口を開いた。
「ワタシ達、最近注目を浴びるようになったアイドルでして」
「あ、うん。大丈夫。知ってるよ」
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作者名：サインバルタ | 作成日時：2019年9月25日 10時
