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「わたしの友人に、政治を中心とした記事を書くフリーライターがいるんですよ。それで彼女がちょっとした特ダネを押さえたもんですから、嬉しかったんでしょうね。わたしに話してくれたんです」
嘘ではない。フリーライターの滝川紗羽が、ファウストと東都政府の繋がりを暴いたのは記憶に新しいことであるし。それを公表するのに失敗したとも言っていない。友人かどうか、は。疑わしいところではあるが。細坪はまだ若干疑わしげな目をしていたが、季実子がこれ以上話すことは無いと察したらしい。険しい表情のまま季実子から目を逸らすと、重たい口を開いた。
「北都コンサートの持ち時間は一時間だ」
「たった一時間?」
「西都でのコンサートもあること、準備期間が少ないことを考慮してあちらさんが出してくれた条件だ。西都でのコンサートとほぼ同じセトリでも構わないとも言われている」
「正直、弱小事務所の地下アイドルをそんな条件で呼んで一体なんのメリットがあるんでしょう」
トレーナーは未だ納得いかなそうに首を傾げている。どこかで何か怪しい思惑が渦巻いているような気がして、季実子も不安を抱いてはいるのだが。ブラッドスタークの件で気を揉んでいるというのに、更に心配事を増やされ、彼女の頭はパンク寸前だ。しかし、情報量が少なすぎる為今考えていても仕方がない。彼女は愛花とジェイミーの背に手を回すと笑顔を作り言い放つ。
「まぁ、今考えていても仕方ありませんからね。なるようにしかならないですし。ネットで全国中継でしょう?わたし達も初めての試みですし、精一杯やりましょ」
そしてその背に回した手で彼女らの背を叩くと、季実子は鏡の前に出た。
「練習再開するわよ愛花、ジェイミー!」
「はーい!」
北都側の思惑が気にならない訳ではない。しかし、それもこれも全てはその時になれば分かることだ。マカロンズの三人は、すぐ先にある数奇な運命を歩むことも知らず、ただ目の前にあるチャンスの為また前に進むことを決めたのだった。
ブラッドスタークは、この上なく苛立っていた。季実子と同様に、昨夜のことが忘れられないのである。否、彼は忘れようとしているわけではなかった。ただ、昨夜のことを思い出す度に胸の奥がキリキリと締め付けられるような感覚がして、この未知の感覚が不快で仕方なかったのである。
「面倒くせぇなぁ、一体なんだってんだよ……」
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うれい(プロフ) - Haiterさん» コメントありがとうございます!マスターと夢主のやりとりは一番楽しんで書いているところなので、お褒めいただき嬉しい限りです!夢主まで好みと言ってくださるとは……!これからも性格の悪い彼女が暗躍しますが、彼らの幸せを願って下さると幸いです^^ (2018年12月9日 15時) (レス) id: 41522bcf43 (このIDを非表示/違反報告)
Haiter(プロフ) - 初めまして、コメントさせていただきます。マスターとヒロインのやり取りが可愛くてニヤニヤしながら、毎回読ませて頂いてます!ちょっとダークなヒロインも好みで大好きです!これからも更新楽しみにしております(*´▽`*) (2018年12月8日 23時) (レス) id: fd3983f77f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サインバルタ | 作成日時:2018年11月20日 6時