捜索卅陸 ページ36
『これやる』
正真正銘の初対面の子に何かを貰った。
差し出されたのがゴキブリだと勘違いしたあたしは、発狂しながら貰い物を蹴飛ばした。
『ゴッッキイイイ!?!』
蹴飛ばした瞬間の彼の顔は今でも忘れていない。魂が抜けたような顔をしていた。
よくよく聞いたらクワガタだったらしく。
申し訳ないことをしたという気持ちと、
でもいきなり渡されてもゴキブリに見えるだろ、という自分が悪いということを認めたくない気持ちが、葛藤して謝れなかった。
けれどあたしが謝らなかったからか、それ以降見ていない。
その子は元気だろうか。
大人になった今では謝れる。
ごめんね。蹴っ飛ばして。
昔のことを思い出して、あたし一体どうしたんだろう。
違う違う、あたしは今、隠で……風柱様を…………
『きゃぁぁあああ!!!お、おっ、え!?な、なに!?!?お、に…!?!?』
目の前に現れる恐ろしい人喰いに腰が抜けて逃げられない。
もしかしてこれが、“鬼”?
いやいやいや。ありえない。
だって鬼だなんて。
都市伝説かなにかでしょ?
そう思いたい気持ちも、目の前の人喰いを見ていれば段々と“鬼”が本当にいるんだ、と実感させられる。
『静かにしろよ…美味しく喰ってやるからなぁ…』
段々近づく鬼との距離に恐怖を覚える。
抜けた腰はガクガク震え、余計に動けない。
『い、いやっっ…!!!』
そう恐怖して叫んだ。
心臓の音がうるさくて周りの音が聞こえない。
どうすることも出来ないのに死にたくないという生の縋りがとてつもない。
そんな状況の中、目の前に現れた剣士にあたしは目を奪われた。
一瞬にして鬼の首が飛んだ。
『へ…?』
窮地を救われた時のこの高揚を恋だと思った。
背中の“殺”の字が意志の強さを表していると知った時にはあたしはもうメロメロ。
その時のあたしの顔はきっと阿呆そのものだっただろう。
お礼を言おうと立ち上がろうとしたが、やはり腰が抜けて……。
は、恥ずかしい。。
赤面を隠したくて顔を下にした。
それを見て剣士様が手を差し伸べてくれた。
『立て』
『あ……ありがとうございます…』
手を貸してもらいながら立ち上がった。
なんて紳士なのだろうか。
『鬼に会ったら俺を呼べ。………すぐ駆けつける』
十分にお礼も出来ないままそう言って去ってしまった。
一目惚れしてしまったあたしはここで隠になることを決意した。
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やぁ - 全部の作品繋がってますよね?!やばい!まじすごい!もう一周してきますヾ(´▽`*)ゝ (2021年7月31日 14時) (レス) id: d87333c5a5 (このIDを非表示/違反報告)
あやめ(プロフ) - キュンキュンしました!実弥の、蛙の王子様ならぬグーちゃんの王子様!トテトテついてくるグーちゃんは可愛いし、実弥に戻ったらすごくかっこいいし!物語の内容も面白いし、最高です!実弥に恋してしまいそうです、どうしよう笑!幸せな時間をありがとうございました! (2021年7月23日 12時) (レス) id: 6a2842892c (このIDを非表示/違反報告)
赤目のなりすまし(プロフ) - 柿ピー。さん» 柿ピー。様、そのお言葉とても嬉しいです………(;;)読んでくださってありがとうございました(;;) (2019年10月23日 1時) (レス) id: 52f4f26d76 (このIDを非表示/違反報告)
赤目のなりすまし(プロフ) - レンさん» レン様見ていただきありがとうございました!!!これからも頑張ります〜〜〜(;;) (2019年10月23日 1時) (レス) id: 52f4f26d76 (このIDを非表示/違反報告)
柿ピー。 - 神作品... (2019年10月19日 14時) (レス) id: 49a5bdcfae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤目のなりすまし | 作者ホームページ:http://instagram.com/nuka___1111
作成日時:2019年9月19日 21時