第290話 ページ11
部屋中から息が漏れた。
『一安心』、という雰囲気だ。
ピス｢何泣いてるの、Aたん｣
A｢どこも、痛くないですか?｣
ピス｢痛くない痛くない｣
意識がなかったピスティは、市街地で警備をしていた自分がなぜ王宮にいて、なぜAちゃんが泣いているかなんて理解しようがないはずだけど。
それでも、Aちゃんに背負わせるものを増やさせまいとしていることが、私には伝わった。
やっぱり、彼女は八人将の一人だ。
この国の守護神だ。
鼻がつんとした。
ピスティは抱きしめ返すと、足に力が入らないのかAちゃんの膝の上のまま、顔を覆っているAちゃんを見つめた。
ピス｢…泣かないでよ｣
A｢はい、｣
Aちゃんは、ぐし、と雑に腕で拭いた顔を上げて笑った。
ピス｢あー、ぶすになってる｣
A｢う、うるさいですよ｣
二人は柔らかく、笑い合った。
私が近づくと、ピスティがこっちを向いて、大丈夫だよ、と私の手をきつく握って立ち上がった。大丈夫なわけがなかったが、Aちゃんの足のケガを慮ったのだろう。
ヤム｢…あなた、襲撃で人質に取られてたのよ。｣
ピス「…そうなの。えー、皆さんご迷惑おかけしました！」
へへ、と悪戯がばれたときと同じ笑いを零して通常運転に舞い戻った。
シャル「ピスティマジで大丈夫か!?」
アラ「ぐったりしていたから驚いたよ…」
口々に言葉をかけると、ごめんごめんと頭を掻く。皆、はあぁーっと大きく息を吐いて、肩の力が抜けた。
シン「本当によかった。
外傷がないようで何よりだが、二人を医務室へ。アリババ君、ピスティを頼む。
さぁ、Aさん、俺の肩に腕をまわs」
モル｢マスルールさんが運びますから安心してくださいシンドバッドさん｣
シン｢…はい。
シャルルカン、会議室はこうして破損していることだし、食堂に集まるよう伝達してくれ｣
……シンドバッド王も、通常運転だ。
A｢ごめんなさい、マスルールさん｣
マス｢いえ。謝らないでください。｣
モル｢少しの間、休んでください。私たちが近くにいますから｣
A｢…、はい。｣
俯くAちゃんに、安心してくれとは言えないことが、辛かった。
ここにいたのが本物の『スラ』であれば捕えられたのに。安心させられたのに。
…今はジャーファルさん達からの連絡を待つしかない。
シン｢…状況が分かると良いな｣
ヤム｢はい｣
歯痒い思いをしてばかりだわ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 345人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「アニメ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
カルティ(プロフ) - 凛さん» 長らくお待たせしてます。凛さんのコメントに、本当に救われます…！凛さんに宛てる心づもりで書いていきたいです。どうぞ、今後もよろしくお願いします！！ (2020年5月2日 18時) (
レス) id: 8b553715eb (このIDを非表示/違反報告)
凛 - 更新ありがとうございます。このお話が大好きで、ずっと楽しみにしていたので、とても嬉しいです！続き楽しみに待っています。 (2020年4月26日 0時) (レス) id: 119aca1ca3 (このIDを非表示/違反報告)
カルティ(プロフ) - 幽さん» 幽さん、コメントありがとうございます。温かい言葉に支えていただき、今日更新に至りました。これからもお待ちいただけたら嬉しいです！これからもどうぞよしなに。 (2019年11月30日 18時) (レス) id: c008cc11a5 (このIDを非表示/違反報告)
カルティ(プロフ) - 夏澄さん» 夏澄さん、ありがとうございます！更新しました！！読みやすいと言っていただけて口が緩むのが抑えられません…！読みにくさを気にしてるので本当にうれしいです。今後もどうぞよしなに〜。 (2019年11月30日 18時) (レス) id: c008cc11a5 (このIDを非表示/違反報告)
カルティ(プロフ) - Msさん» Msさん、ありがとうございます！落ちは最後まで明かしませんので、どうぞこれからもよしなに。マスルールとももだもだできるといいなと思ってます(笑) (2019年11月30日 18時) (レス) id: c008cc11a5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：カルティ | 作成日時：2015年7月30日 19時
