【あんスタ】貴方の愛を求めます５【朔間零】 (ページ18)

今日:10 hit、昨日:24 hit、合計:36,258 hit

２１８ページ18

羽風の顔を冷す氷を取り替えるため、その場を少し離れるA。

夏の夜は太陽が出ていない分、昼間ほどの暑さは感じられないが、手に持つ氷が体温と気温ですぐに溶け始めてしまう。

クーラーボックスの中に入れていた氷だけは、まだ溶けていなかった。

作業をしていると、砂浜を歩く足音が聞こえAはそちらに視線を向けた。

『……どうしたの？零ちゃん』

「折角の海じゃからのう。

薫くんのことはわんこらに任せて、少し散歩でもせんかや？」

零はそう言うと、氷を触って冷たくなっているAの手を引いて歩き出す。

Aも流されるように歩き出した。

『今日の『海賊フェス』は大盛況だったね』

「うむ。我輩の知人も、感謝しておったわい。

売上も上々じゃし、明日はもっと客が増えるじゃろうな」

今日の仕事の成果を話ながら、海辺をゆっくりと歩く。

砂に足を取られ少し歩きづらいが、押し引きする波の音が心地良く、沈黙の間も退屈はしない。

『そういえば、零ちゃんと海に来たことなんてなかったよね』

「吸血鬼は水が苦手な種族じゃからのう～」

そう言って冗談めいた笑みで零は誤魔化した。