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翌日のこと。
職員室で空いた時間を持て余していると、昨日ライブハウスで出会った『Valkyrie』の影片みかが職員室にやってきた。
恐る恐る扉を開き、キョロキョロと当たりを見回している姿がAの目に入る。
『あの子、斎宮くんのところの……』
「えーっと、衣更…先生いますか?」
『え、私?』
Aの声が聞こえたのか、影片はAを見つけると小走りでやってきた。
「あ、あのぉ……昨日はすんませんでしたぁ!」
開口一番、勢いのある謝罪にAは唖然と口を開けて影片を見つめる。
「あの後、お師さんから色々聞いて……
ほんま、なんも知らんくせにあんなこと言ってごめんなさいっ!」
『ちょ、ちょっと落ち着こう!?
ここじゃ他の先生たちに変な目で見られるから、とりあえず外行こっか?』
Aはそう言うと影片を連れ、人気のない外に出た。
『____それで、斎宮くんに聞いたって……なにを?』
「あの『fine』の親玉と、先生の関係とか…
去年のこと、あの朔間先輩から聞いたってこと、お師さんが教えてくれたんよ」
『零ちゃんが?』
「去年、おれたちが被った悲劇に、あんたは何一つとして関与していないって。
おれ、なんの事情も知らんと、ただあの天祥院先輩の元カノやったってだけであんなキツいこと言うてしまって……」
影片のその言葉にAは安堵の笑みを浮かべた。
『謝らないで。英智くんの元恋人だったことは本当だし、彼のことを止められなかった私も責任は感じてるんだから』
「んあ〜……優しい人なんやなぁ……
おれ、てっきり悪い人かと思って勘違いしとったわぁ」
Aと影片はようやくお互いの顔を見て笑みを零した。
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作者名:もぶピ | 作成日時:2022年10月2日 23時