601話 ページ7
和臣が、チッと舌打ちした。
「トップがそんなだから、下にいる北森秀雄なんかも、ろくなことをしないんだ」
まったくよね。
「そんなのは、許せない。すぐ捜査して、逮捕すべきだと思う」
立花さんがそう言うと、美門が、ヒュ〜ゥと尻上がりの口笛を吹いた。
「おまえ、結構、過激なのな」
皆で顔を見合わせる。
「ん、正義派だから」
「道でタバコ吸ってるヤツに、注意するって言ったくらいだし」
『私たちが追ってる事件って、そんなに大きかったかしら』
「完璧、話、ズレたな」
和典が、皮肉な笑みを浮かべて立ち上がり、窓辺に寄る。
「えっと、確か、このあたりから見えたと思ったんだけどな」
人さし指をブラインドの間に突っこみ、音を立ててそれを押し下げた。
「ああ、見えた。あそこだ」
私たちは、いっせいに立ち上がり、和典のそばに寄った。
ブラインドの間から、斎藤総合病院という赤い文字の看板が見える。
「あれが、その製薬会社と癒着がひどいって評判の病院」
「おい、見ろよ」
和臣が叫ぶように言った。
「あれ、北森秀雄じゃないか?」
みんなは、いっせいにブラインドに顔を押しつけようとした。
私は紐を引いて、ブラインドを上に上げる。
「ほら、今、ここを通りすぎたヤツだよ。そこ。もう背中向けてるけど、ほら、あれ」
窓の外は駅前から続く大通りで、混み合ってる上、街灯や店の明かりがスポット的に一部分だけを照らしているから、よくわからない。
私は何気なく窓を開けて、ドアの方に向かって叫ぶ。
『誰っ?!』
皆が反応したのを見て、ドアを指差す。
『今、確かに誰かの視線を感じたわ』
「見てくる」
皆の視線がドアに向いているのを確認して、美門の頭をつかんで窓の外に向けた。
『北森秀雄に間違いない?』
「ああ、臭いが同じだ」
『よし、行くわよ』
美門の腕をつかんで、皆に追い付いて言う。
『目が見えたわ。確かにあれは北森秀雄よ。私の後を犬っころが追うから、皆はその後ろを付いてきて』
外に出て、皆がまだ遠い間に、小声で美門に言った。
『北森の下水の臭いが辛ければ、私のを追ってきて。けど、絶対私を見失わないで。皆に怪しまれないようにね』
「そこまで過敏にならなくていいと思うけど…了解」
美門の案内で北森秀雄を視界に入れ、私たちは分かれた。
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きょっちー(プロフ) - 翡翠さん» もちろんです!今は少し忙しいので遅くはなってしまいますが、番外編の方にコメントしていただければ、喜んで書かせていただきます!これからもよろしくお願いしますね (2020年8月22日 18時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
翡翠 - 久しぶりに書かせていただきます。しばらく見ていなかったのですが、更新されていて一気に見てしまいました。また仲良くしてくださいますか?無理のない範囲でいいので、コメントやリクエストに答えてくれると嬉しいです。よろしくお願いいたします。 (2020年8月22日 18時) (レス) id: f43e9245c3 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 天愛さん» コメントありがとうございます!テスト等の都合でお休みはもらっても、やめることはありません。むしろ駄作者もこれどこまで続くんだろうと、先が見えてない状態なので…。なので安心して、これからを楽しみにしていただけたら嬉しいです! (2020年8月11日 15時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
天愛 - 早く続きが見たい!!とっても面白いのでやめたりしないでくださいね!更新応援してます!ファイトです! (2020年8月11日 15時) (レス) id: 74d4bab595 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - メロンパンさん» コメントありがとうございます!面白いと言ってもらえる度、駄作者のモチベーションは上がっていきます。これからも、楽しんで頂けるよう頑張っていきます! (2020年8月8日 22時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年8月6日 22時