638話 ページ44
土曜日になったが、私は数日後のサッカーチームの試合の打ち合わせがあったため、貴和とは別で集合場所に向かった。
私が着いた時には、通用口の前にみんなが集まっていた。
「おう、遅かったな」
『打ち合わせで少しね。今度の試合、おそらく荒れるわよ』
貴和は誰かに電話をしている。
「今、前まで来てるんだけどさ」
和臣か。瞬間、ドアが音を立てて開き、中から和臣が顔を出した。
「よっ、ご苦労。入ってくれ」
まるで自分の家ででもあるかのように、私たちを招き入れる。
「ここ、カードキーなんだ」
そう言われて見ると、ノブの上に小さなレンズがはめこまれていた。
なるほど、それで皆が立ち往生してたわけね。
「そこに、カードを当てればいいだけだ」
和典が首をひねった。
「こういう場所が増えてくると、万能キーオープンじゃ歯が立たないな。新しい攻略法を考えないと」
和臣がニヤッと笑う。
「そいつは、上杉先生とA先生の仕事だ。よろしく頼む。じゃ入って。後でカード渡すからさ」
ドアの奥には真っ直ぐな廊下が続いていて、脇にエレベーターがあり、従業員専用と書かれていた。
「乗って」
和臣に言われて乗りこむ。
それは、カプセルのような形をした透明なエレベーターで、外側が赤や青のランプで飾られ、上がっていくにつれてそれが点滅するようになっていた。
「アーヤ、うれしそうだね」
貴和に言われて、立花さんは笑った。
「かわいいんだもの」
和典が、信じられないといったような顔で、まじまじとそちらを見た。
「エレベーターがかわいいなんて、おまえ、おかしくない?Aはどうなんだよ」
『従業員専用なんだから、こんな飾り付けずに荷物を多く運べるよう、広さにお金をかければいいのに、って思うわね』
「Aらしいね。でも、結構、速いね、これ」
和彦が言った通り、あっという間に、町は足の下になっていった。
床も全部透明なので、少しばかりテンションが上がる。
「美門の親戚の店は、最上階なんだ」
和臣がそう言っている間に、エレベーターは最上階に到着した。
ドアが両側にさっと開き、その向こうが見えて、立花さんが声を上げた。
「わぁ!」
エレベーターホールから真っ直ぐな廊下でつながっている突き当たりに、大きなショーウィンドーがあり、金色の字で[M&M]と書いてあって、そこにずらっとお姫様ドレスを着たマネキンが並んでいた。
デザインも色も、多種多様。
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きょっちー(プロフ) - 翡翠さん» もちろんです!今は少し忙しいので遅くはなってしまいますが、番外編の方にコメントしていただければ、喜んで書かせていただきます!これからもよろしくお願いしますね (2020年8月22日 18時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
翡翠 - 久しぶりに書かせていただきます。しばらく見ていなかったのですが、更新されていて一気に見てしまいました。また仲良くしてくださいますか?無理のない範囲でいいので、コメントやリクエストに答えてくれると嬉しいです。よろしくお願いいたします。 (2020年8月22日 18時) (レス) id: f43e9245c3 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 天愛さん» コメントありがとうございます!テスト等の都合でお休みはもらっても、やめることはありません。むしろ駄作者もこれどこまで続くんだろうと、先が見えてない状態なので…。なので安心して、これからを楽しみにしていただけたら嬉しいです! (2020年8月11日 15時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
天愛 - 早く続きが見たい!!とっても面白いのでやめたりしないでくださいね!更新応援してます!ファイトです! (2020年8月11日 15時) (レス) id: 74d4bab595 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - メロンパンさん» コメントありがとうございます!面白いと言ってもらえる度、駄作者のモチベーションは上がっていきます。これからも、楽しんで頂けるよう頑張っていきます! (2020年8月8日 22時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年8月6日 22時