警察官でした。13

618話 ページ24

「いいね」

貴和がわずかに笑い、和臣がうなずいた。

「よし、それでいこう。引っ越し先は、わかってるんだからな。秀雄を脅せば、主犯だけでなくて犯行時間や、その様子もわかる。なんたってあいつは、その証拠をつかんで金にしてるんだから」

「上杉先生」

貴和が言った。

「人工呼吸器の酸素濃度が40パーセントを下回ったら、その後、どのくらいで死.亡する？」

和典は、少し考えてから答える。

「ケースバイケースだけど、老人限定だと考えれば、たとえば45パーセントの濃度がその半分くらいに落とされたら、もっても約2時間ってとこかな。もっと早いこともある」

時間勝負ってことね。

「分担を決める」

そう言って和臣がフラペチーノを飲み干し、コップをカタンとテーブルに置いた。

「北森秀雄の訪問は、オレと黒木にA、アーヤ。小塚は、分析作業。上杉と美門は、待機。オレが緊急の連絡を入れるかもしれないから、その時はすぐ出動できるようにしとけ。では、諸君の健闘を祈る。各自、始動っ！」

※※※

「ここだ。あそこに入れよう」

北森秀雄の引っ越してきたマンション。その玄関に向かって右手にある駐輪場に3人は自転車を停め、私は貴和の自転車のカゴにスケボーを入れた。

和臣と立花さんは何かを話していて、玄関に向かっていた貴和がそちらを振り返った。

「ドアはオートロック、管理人は曜日によっていたりいなかったり。今日はいない」

テキパキと言い、1人で玄関に通じる階段を上っていく。

私たちも後を追ってその階段を上がり、右手に管理人室を見ながら、シースルーのドアを入った。

突き当たりに鍵のかかったもう1枚のドアがあり、左手には郵便箱が並んでいる。

その向かいの壁に、各部屋を呼び出すドアフォンが埋めこまれ、部屋番号のシートボタンがついていた。

「2階の204号室だ」

郵便箱の名前を見た貴和がそう言い、こちらを向く。

「どうする？呼び出すか？それとも突撃するか？」

『突撃ね。秀雄はまだ周りを警戒しているでしょうから、逃げられたら面倒よ』

貴和はうなずき、アゴでオートロックの鍵穴を指した。

「じゃ、開けて」

針金を手に、ドアの前にひざまずき、カギ穴に差しこんだ。

「制限時間は、3分ね」

『冗談』

ガチャリという音の後に、シースルーのドアが動き出す。

『この程度、5秒もあれば十分よ』

貴和が小さく拍手をした。

「お見事」

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