追想-TUISOU-１０ Secretな彼女番外編 (ページ34)

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「国境なき医師団？」

「そう・・・
それで、卒業旅行でヨーロッパまで行くのだったら
直接、フランスの支部を訪ねてみようと思ったの
そのメモの番号は、フランス支部の番号・・・だったと思う。
ごめん、遠い過去過ぎて記憶が」

俺は思い出せなかったメモのことより
当時の一番モヤモヤしていた所が気になった

「どうして？そんな大事なこと、俺には話せなかったの？」

「どうしてって・・・
それは、今思えば若かったってのもあるんだけど
行方が分かればもちろん安心できるっていうのもあったし
それに・・・家業を継ぐ気があるのかないのかはっきりさせたかったの・・・
じゃないと、それこそ私に全て降りかかってくる
降りかかってくれば、それこそ翔との将来なんて難しいでしょ？
こんな重い話を話す方が嫌がられてしまうと思ったから
だから翔には知られず私の中で決着をつけたかったんだと思う」

「一人で決着を？」

「そう・・・」

そう言ってクスっと笑った

「てことは、この時はまだ俺との未来を見越しての行動だったってこと？」

唇を少し噛んで

「そう、その時はまだ見えてたと思う、
いや、むしろそれしか選択肢は無かった
私は翔と一緒にいたかったから・・・」

俺をまっすぐに見た

俺はその視線思わず吸い込まれそうになる

「じゃあ？どうして？
どこで、見えなくなった？」

俺の言葉に
今度はその目がもう過去のことなのだと
俺を現実へと戻す

「もういいじゃん、過去のことだし
男が過去を振り返るなんて」

「今の発言は撤回して？
男だから、女だからではなく、ただ単に人として気になってるだけ」

「ごめん・・・」

そう謝ったリンが、フーっと深いため息をついた

「言いたくない理由があるの？」

「そうじゃないけど？」

俺は、これ以上攻めてはとは思い
話題を変えることにした

「お兄さんは？それで見つかったの？」

そう言うと俺を見てこういった

「やっぱり、翔はキャスターなんだぁ」

「何がだよ」

「抜かりがない」

「どういうことだよ」

そう言って、一度置いたグラスを手にし
一口飲むと

リンが
ボトルに手を伸ばし

軽くついでくれる

「飲めるでしょ？」

「あぁ」

「昔から強かったもんね」

「だな・・・寧ろ年々強くなってきてるかも
で？お兄さんは？」

「わかった・・・
全て話す
当時何があったのか」

・・・

俺はそこに紐解く鍵があったのかと
息を飲んだ