追想-TUISOU-１０ Secretな彼女番外編 (ページ35)

今日:2 hit、昨日:6 hit、合計:89,085 hit

35 ページ35

心地いい風が吹き

遠くを見つめていたリンが俺を見た。

「どこから話せばいいんだろう？」

そう言って唇を少し噛み
微笑む

「リンが話せるところからでいいよ。」

「そうだなぁ、じゃあ、私が心に引っかかってたところから
話そうかな」

「リンが心にひっかかってたこと？」

意外な話のスタートだった

「そう、
卒業旅行辺りからかなぁ
翔・・・すごく不安になってたこと覚えてる？」

「・・・そうだっけ？」

「翔が覚えてないんだったら、わざわざ話さなくていっか」

「いや、それは話そう」

「やだよ、なんだ、私の勘違いだったら嫌だもん」

そう言って
昔のようにクスクス笑う

「いいや、ただ単に忘れてるだけかもだから、
話して？」

そう言って、バケッドをちぎり、口に入れる

「翔さ・・・すごく私と将来のこと不安になってなかった？」

遠い日のことを思い出す

「あぁ、そのこと？うん、なってたよ、
まぁ、念頭に遠距離が始まるってのもあったからだろうけど
なんだろ、
その頃くらいかな、俺の知らないリンが見え隠れするようになったんだよ
だから、不安になってたなぁ、確かに」

「あぁ、やっぱり、翔は勘がいいから、なんとなく気づいてたんだね」

そう言って、グラスのワインを口に含む

「あの頃、ちょっといろいろなことが私の中で起きてたの」

「いろいろなこと？」

「そう、さっき話した兄の件もそうだんだけど、
卒業後、私は完全に実家に戻ることになって、
将来が漠然と嫌でも見え始めたのね」

・・・

「で、誤解しないで欲しいんだけど、
あ、いや、もう過去のことだから、聞き流してもらってもいいんだけど」

「やだね、聞き逃しが無いように
こうしとく」

と、俺がわざと耳に手をやると
リンがフっと笑った

「私は、翔と別れるなんて考えたこと無かったよ
むしろ、このまま・・・
まぁ、若い時に考えそうなことよ
ずっと死ぬまで一緒にいるんだって思ってた」

「・・・それは、たぶん確かイタリアでそんな話したような覚えがある
だからなんだとうけど、腑に落ちないんだと思う
じゃあどうして？って」

「で、当時の私は考えた。
早い話が、兄が戻ってきてくれさえすれば問題は無いと
単純だけど」

・・・

一息つき、話を続けるリン

「兄が戻ってきてくれたら、すぐにでも東京に戻る・・つもりだった
・・・兄には申し訳ないけど、これは下に生まれた妹の特権だとすら
思ってた。
まず、これが1つ」