316、善と悪 ページ20
特定の誰かに呼ばれるだけで、自分の名前がより特別に思える気がした。
(それはやっぱり、俺がこの人のことを特別に思っているから…?)
すると。
__それ以上考えたらダメだ。
と、突如自分の中にいる誰かが声を上げた。
__その気持ちを認めちゃ、もう元には戻れなくなる。
元には戻れない。それはヒロトともAとも、今のような関係ではいられなくなるかもしれないということ。
それを考えると、やっぱり怖い。
「…やっぱり、いつも通りに呼び合おうか。変な感じするし…」
「う、うん…」
タツヤから急に元気が無くなったと、Aは察した。
そうして、タツヤは自分からまたチャンスを逃した。
その時。
__本当に、それでいいのか?
と、自分の中にいるもう一人の誰かが現れた。
__強がったりして、後悔しない?
…後悔?それはつまり、このままヒロトのことを応援し続けて良いのかってことか?
「…っ」
後悔、しそうだな。もしかすると、もう…してる。
自分の中の善と悪に葛藤しながらも、タツヤは自分の本能のままに行動したい、そう思った。
「西村さん、俺…」
「こんなところにいたんだな、ブス」
「…!」
タツヤがAに向き合った時、ヒロトが入ってきた。ちょうど遊園地から帰って来たところらしい。
タツヤは咄嗟にAから離れた。
「…何してたんだ?」
ヒロトがAとタツヤを見比べながら言う。
「な、何でもない。掃除してただけだよ」
ヒロトに誤解されないように平静を装うタツヤ。
「あっそ」
ヒロトは特に気にとめることなく、手に持っていた袋をAに突き出した。
「…ほらよ」
「え、どうしたの、これ?」
中身は缶に入ったお菓子だった。
「遊園地の土産」
よく見ると袋を大量に持っている。メンバー全員の分のお土産を買って来てくれたようだ。
「お前、そういうの好きだろ」
「うん!ありがとう!」
タツヤはヒロトに向けて笑っているAを見て胸が締め付けられる感覚がした。見るに耐えない光景だと自分の体が判断し、黙って部屋を出て行った。
(…基山君?)
何も言わず出て行ってしまうタツヤに気づき目で追うA。
「どうした?タツヤの奴」
「……」
ヒロトもAもタツヤのことが気がかりになっていた。
(…基山君、何か私に言おうとしてたような…)
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紅葉(プロフ) - 夜空さん» コメントありがとうございます!楽しみにしていただいてとても嬉しいです!これからも更新頑張ります! (2019年9月29日 11時) (レス) id: bcd97f376b (このIDを非表示/違反報告)
夜空 - とても面白くて新しい更新を楽しみにしてます!タツヤの恋も応援したい!ヒロトの恋も応援したい!どうなるの〜汗 (2019年9月29日 2時) (レス) id: d246f2b775 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - ドルチェさん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです!これからも更新頑張ります!! (2019年9月23日 12時) (レス) id: bcd97f376b (このIDを非表示/違反報告)
ドルチェ - 紅葉さん,いつも楽しみにしてます!これからも拝読させて頂きます!頑張ってください! (2019年9月23日 12時) (レス) id: 697128a6e4 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - ルナさん» コメントありがとうございます!アツヤの登場でさまざまな人間関係が大きく変わっていく、ということをテーマに書いていく予定ですので、楽しんでいただけると幸いです。これからも頑張ります! (2019年9月14日 8時) (レス) id: bcd97f376b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅葉 | 作成日時:2019年9月8日 22時