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「おめでとさん、ほらよ」
おじさんが高尾くんに景品を渡す。百聞は一見にしかずという諺があるが、その通りだと思う。
「おっちゃん、ありがと。Aちゃん、わかった?」
「うん、なんとなく」
高尾くんを真似して私も構える。そして、打つ。
「あ……」
するととっても小さなものだったが、撃ち落とすごとができた。
「やるな、嬢ちゃん。ほらよ」
「ありがとうございます」
「Aちゃん、すげー!」
おじさんと高尾くんに褒められて少し照れてしまう。
「よし、じゃあ次は大物狙おうかな!」
高尾くんが張り切って、2発目の準備をする。
「私は欲張らずに行くよ」
私は高尾くんの右で、2回目を打とうとする。そこで、私は高尾くんに話しかける。
「高尾くんってさ、梨花のこと、好きでしょ」
パァン!
それと同時に高尾くんが弾(たま)を放ったが、景品には当たらずに屋台の壁に当たって落ちる。
「え〜今それ言う?」
外した悔しさなのか、恥ずかしさを誤魔化しているのか、高尾くんがヘラヘラとそう言う。
「うん。だって今、私たち2人しかいないし」
そう言って私は2発目を打つ。やった、また落ちた。
「ていうか、色々わざとでしょ。私の前で梨花のこと好きって仕草したり……」
私は高尾くんを見ずに、3発目の準備をする。
「……まあな」
少しだけ、高尾くんの声が低くなった。チラリと目だけ向けると、彼も3発目を打とうとしていた。
「梨花ちゃんて、真ちゃんのこと好きじゃん?……悔しいけど、嫌われるくらいならむしろ協力したい、みたいな?」
3発目の彼の弾が打たれる。大物が少し動いたが、落ちはしなかった。
「なるほど。じゃあ〈コレ〉は梨花に頼まれたってわけね」
私も3発目を打つ。高尾くんと一緒で、モノは動いたが、落ちなかった。
おそらく、梨花は高尾くんに、緑間くんと2人きりにして欲しいみたいなことを頼んだのだろう。梨花が高尾くんの想いに気づいていないとはいえ、なかなか酷いと思う。
「Aちゃんも分かってて何も言わないとか、いい性格してんねー」
彼の4発目。
「イヤならイヤって、高尾くんが言うべきでしょ」
私の4発目。
どちらも景品は落ちず、かすっただけだった。残り1弾。
「まあそうだけど、Aちゃんはヤじゃないの?梨花ちゃんと真ちゃんが一緒にいるの」
「私は、別に」
「え?なんで?Aちゃん、
真ちゃんのこと好きなんじゃないの?」
パァン!
私の5発目は大きく外れた。
「は?」
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作者名:ぷよぷよぷよん♪ | 作成日時:2022年5月10日 16時