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8月とかに行われる大々的な祭りと比べると、小規模であったが、それなりに参加者はいた。油断をすると迷子になってしまいそう。
現に、私と高尾くんは、梨花と緑間くんとはぐれそうだった。
「お、ここの焼きそばうまそー!」
「お面売ってんじゃん、真ちゃんにプレゼントしよっかな!」
「な、Aちゃん、射的やんね?」
しかし、慌てることなくあちこちの屋台を、止まってみる高尾くんの様子から、私はなんとなくそれが意図的なものであるのを察して、わざと高尾くんを無視するのをやめ、射的の屋台の前で立ち止まった。
「いいよ」
「お、乗り気じゃん。じゃあ、1ゲームずつやってこーぜ」
私が射的に反応したのが少しだけ意外だったのか、彼は一瞬驚いていたが、すぐにいつものおちゃらけた表情に戻ってそう言った。
「おっちゃん。2人分、おねがいしまーす」
「あいよ」
「お金……」
「いいっていいって。ほら、これ」
屋台の目の前に行くと、高尾くんがおじさんに2人分のお金を出した。私が高尾くんにお金を渡そうとするも断られてしまい、そのまま無理やり銃を押し付けられ、渡すタイミングも失ってしまったため、今回は甘えることにした。
「ありがと……」
銃を受け取るが、実は私は射的をやったことがなかった。打ち方や構え方が分からず、しばらく静止していると、「あれ、分かんねーの?しゃーねーな」と高尾くんが私のすぐ側に来て教えてくれた。
「左手はここを支える用に持って、右手は引き金んとこね」
「こう?」
「そそ。んで、右脇締めて、銃の後ろ部分を頬につけて打って」
「は?」
最初の方は分かったけど、やっぱり口だけの説明じゃ分からなくなってしまう。
「えーじゃあ俺の見てて」
そう言って高尾くんは1発打った。そして、景品が落ちる。
「おお……」
思わず感嘆の声が出る。
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作者名:ぷよぷよぷよん♪ | 作成日時:2022年5月10日 16時