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それでも走り出して抱きつかなかったのは、ひとえに他の人への思いやりのようなものが残っていたからで。己の理性に少しだけ感心した。けれど、それは後付けでしかなくてもしかしたら単に喜びに打ち震えるあまり動けなかっただけかもしれない。
「どうした。使える鍵はまだ2本あるんだろう」
そうして、ふっと目が合った。
身体を重ねた時に勝るとも劣らない快感のようなものが、全身を這う。あぁ、間違いなく彼は惣右介さんだと今更に痛感する。
その間にも、京楽隊長と惣右介さんの応酬は続く。
「
「出してくれなどと言った憶えは無いが」
「出たくもない男が、残り二本の鍵を使えなんて言うかね？」
「出したくもない者のところに、人の女を連れて、鍵を体に埋め込んでまでくるのか？」
「……やれやれ、お見通しって訳かい」
人の女。その言葉は明らかに私のことで、それは彼にとって私は間違いなく交渉材料へとなり得るという裏打ちでもあった。
茶番にしては緊張感が走る腹の探り合いの最中でも、私と彼とで交わった視線が妙に熱っぽい気がする。もしかしたら彼も、想定内だとしても私と会うことに焦がれていてくれたのかもと自惚れたくなる。
そうして、それが自惚れではなく事実なのだと怯えきった白装束の代わりに彼を縛ることになっても飛ぶことのない指先がそれを示した。
するりと一瞬だけ彼の指が絡む。私の大好きな長い指。ずっと会いたくて触れたくてたまらなかった彼の一部。驚きと喜びに肩を揺らすと大層満足そうに彼は目を細めた。
「ズルい、です……」
「どうしてだい。長らく会えなかった恋人に触れたいと思うのは当然だろう？」
「そう、ですけど……」
彼の拘束なんて絶対に京楽隊長がやった方がいいに決まってるのに。意外にも『Aちゃんがやりな』なんて投げられてしまった。これが単に慈悲みたいなものなのか、私たちを試すための策なのかはよく分からないけれど。ひどく背徳感に苛まれて口篭る。
「君は違うのかい」
「ううん、私も嬉しいです」
肉体的な繋がりだけを重視しているつもりはないけれど、体が熱い。もし、拘束という名分もなく誰もいなければ間違いなく唇を交わえて、その先まで進んでいたかもしれない。
「ほら、イチャついてると僕がやっちゃうよ」
京楽隊長のそんな声にこんな時なのに、思わず目を合わせてまた微笑みあってしまった。
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みるきー(プロフ) - はわー！！！毎日更新の通知が来るのを楽しみにしてます！！ (2021年5月9日 17時) (
レス) id: 3af3c93a7d (このIDを非表示/違反報告)
みるきー(プロフ) - とても素敵すぎて何度か最初から読み直してしまいます。更新が楽しみすぎです！ (2021年4月30日 10時) (レス) id: 3af3c93a7d (このIDを非表示/違反報告)
K2AYEのY(プロフ) - うん……藍染格好いいね……声がいい……でも白哉も声がいい……うーん選べない……( ；∀；) (2021年4月19日 22時) (レス) id: 27ffa47357 (このIDを非表示/違反報告)
K2AYEのY(プロフ) - うわぁぁぁぁぁぁー！！！続きが気になる！！！！！更新頑張ってください！！！！！！！！！！！ (2021年4月1日 17時) (レス) id: 27ffa47357 (このIDを非表示/違反報告)
悠月(プロフ) - 更新楽しみに待ってます！ (2020年6月14日 21時) (レス) id: 96d594e2d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蝶々 | 作成日時：2020年3月26日 2時
