色欲の公爵4 ページ6
「……！」
真紅の色に妖しく光るシーザーの瞳。スージーQは吸い込まれてしまうようにそれを見つめていた。不思議なことに、彼の瞳を見つめている間は周りの音という音が聞こえなくなってしまっていた。まるでこの世に自分とシーザーだけがいるような…そんな不思議な感覚だった。
「…だぁ、もうッ！！いつまで見つめあってんだコラ！！」
その時、ジョセフからぐいっ、と腕を引っ張られる感覚に、スージーQはハッと我に返る。ふとシーザーの方を見ると、彼の瞳は鮮やかな緑色に戻っていた。
「おっと失礼…スージーQの瞳があまりに綺麗だったもので思わず見とれてしまった…。それじゃあ縁があったらまた会おう、お二人さん？」
ニコリ、と爽やかな笑みを浮かべ、手を振りながらシーザーはそのまま従者のカーズを引き連れて、2人の前から去っていた。
その後ろ姿を眺めながらジョセフは呟く。
「…ったく、なんだったんだアイツは…他人の女に薔薇贈るなんてギザな真似しやがって。あの従者も不気味な感じだったしよ…なぁスージー？」
口を尖らせながら、ブツブツと呟いていたジョセフは、ちらりとスージーQの顔を見てそう呼びかける。…が、スージーQは何も答えず、ただぼんやりとシーザーの後ろ姿を見つめていた。
「…スージーQ？」
「へっ…？あ、あぁごめんなさい！私ったらボーッとしちゃった…！」
慌てて顔を上げるスージーQの顔は、ほんのり赤く染っていた。その様子を見たジョセフは、なんだかひどく胸騒ぎがしていた＿＿
「…また貴様は回りくどい手を使いおって」
ジョセフとスージーQと別れたあと、先程まで黙っていたカーズはシーザーにそう声をかけた。従者とは思えないほどに冷たい声だった。それにも関わらず、シーザーは穏やかな口調でかえす。
「仕方ないだろ。人前で目立つマネはできない。それに、彼女のすぐそばに恋人がいたんだからな」
「それにしたって貴様は慎重すぎる。“貴様に与えた力”はただでは無いのだぞ。なのに獲物はまだたったの5人…」
「声が大きいぞカーズ…！獲物と呼ぶのはよせといったはずだろう…！！」
苛立ちながら話すカーズに、シーザーは声を潜めながら注意をする。その声は先程とは違って焦りを見せていた。
「…心配するな、カーズ…“代償”はしっかりと払う。なんせ、俺の計画は順調に進んでいるんだからな…」
そう言ってシーザーはちらりと後ろを振り返り、スージーQの姿を自身の瞳に写し、ニヤリと口角を上げていた。
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作者名：Choco | 作成日時：2021年1月22日 23時
