247 専用衣装/ 好きな人と ページ47
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女性のスタッフさんに上着を被せられて体を支えられる。
お礼を言いながら用意された椅子に座ると、顔色が悪いことを指摘された。
手の震えは止まらないし、現場の空気も悪くなったしで最悪な気分だ。なんなら泣きそうでもある。
( …台本もらった時から分かってたことだった、それなのにこんなに )
染み付いたトラウマはなかなか剥がれないのだと思い知らされた。
Aが施設出身というのは例の件で世間に知られているからか、コソコソと話す人も少なくない。もしかしたら施設に入れられたのはそういう理由なんじゃないか、とか。話されていそうだ。
「Aちゃん、大丈夫?」
「…すみません。撮影、止まらせちゃって」
「ううん。最高の演技ができる方が嬉しいから」
ダメだ、今、何を言われても申し訳なさで死にたくなる。
シュンスケくんの時と状況が違うのは、恐らくシチュエーションや場所があまりにも似すぎたから。
( あの時は引きずらなかったのにな )
静まれ。
治まれ。
「A」
意地でも、止めなきゃ、
「…?」
「そんなに握る締めるでない。…爪が、食い込んでおるよ」
「…れいせんぱい」
「大丈夫、落ち着くのじゃ。ここにAを傷つける者はいない」
赤い瞳がいつものように優しく見つめてくる。
あの時とはまるで真逆で、零先輩は目を逸らさなかった。
先輩の手は相変わらずゴツゴツしていて細長い。
だけどAにとってその手ほど落ち着くものはなくて。
ぽろぽろと涙が落ちていく。
「…こわかった」
「うん」
「一瞬で、意識あっちに、もってかれて」
「うん」
「…零先輩に手紙読んでもらっておいて、よかった」
「…うん」
隣のスタッフさんがハンカチを貸してくれて優しさを感じてさらに涙が出てきそうになったけれど、零先輩が握ってくれたおかげで手の震えは止まったし、気持ちを口に出したおかげで少しスッキリした気分だ。
その後スタッフさんが持ってきてくれたお茶を飲んで、一息ついてもう大丈夫だという旨を監督に伝えると、「また何かあったらすぐ言うんだよ」と言ってもらえた。
シーンはAが逃げ走るところから。
その後のキスシーンのことはまったく何も思わない。
Aは今ササナで、零先輩はランだから。
「『…ササナ? お前その怪我、』」
「『助けてラン…あたし、もうランしかいないの』」
グイッとシャツを掴んで、零先輩の唇に自分のを重ねた。
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かげやま(プロフ) - 名無し62063号さん» コメントありがとうございますෆ ̖́- 長かったですよね、うれしいです（ ; ; ）！めちゃ重すぎてドン引かれないかドキドキしてたのでそう言ってもらえて安心しました…笑 更新頑張ります🥺💞 (2023年1月9日 22時) (
レス) id: cbb4c9f31f (このIDを非表示/違反報告)
名無し62063号(プロフ) - 一気にここまで読んでしまいました、、。主人公ちゃんの設定がめちゃ重いのがとても好きです！！更新楽しみにしています。 (2023年1月8日 1時) (レス) id: 45bc00c6c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かげやま
| 作成日時：2022年12月2日 0時
