青峰大輝【懐かしい匂い:再会】 ページ8
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12月22日
クリスマスが近づいてきて街中に赤や黄色の電飾が飾り付けられている。
たくさんのカップルが仲睦まじく歩いていく横を私は自分の家を目指して黙々と歩いていた。
するとふわっと鼻腔をくすぐったのは懐かしい匂いだった。
思い出すと苦しくて、でも大好きだった匂い。
もうきっと会うこともないんだと思ってた。
奇跡ってほんとにあるんだ、なんて。
『……大輝?』
振り返った私の瞳が捉えたのは、あのころと何も変わっていない彼だった。
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「お前変わってねーな」
『それは大輝もでしょ』
オシャレなカフェの店内で、大輝はコーヒー私はココアを頼んで近況を報告しあっていた。
コーヒーを飲む彼はあのころと変わらない少しとんがった顔のまま。
だけど雰囲気が柔らかくなった気がする。
ずるいなあ。
何年経っても大輝は大輝のままでかっこいいんだもん。
「お前今なにやってんの?」
『しがないOLですよ〜…大輝は?』
「警官」
『は?けーかん??』
「おー」
『けーかんってあの警官?』
「どの警官か知らねーけど多分それ」
ぽりぽりと頭をかく大輝に思わずココアを吹き出しそうになる。
だってあの大輝が警官なんて…。
『……ぶっ、あははっ!』
「何笑ってんだよ」
『だって…っ、警官とか、似合わな…!』
ふつふつと湧き上がる可笑しさに耐えられなくなってついに吹き出す。
目の前の彼はというと「悪かったな、似合わなくて」なんてブスくれる。
私は『ごめんごめん』と目に溜まった涙を拭った。
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