【松】長男は涙を流さない (ページ4)

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4．最後の涙ページ4

おそ松が熱を出した。

中3の、しかも夏休み中にだ。

夏風邪だろう。

誰だよ、馬鹿は風邪ひかないとか言ったやつ。

バッチリ風邪ひいてんじゃん。

それだけなら別に、いつものように病人専用隔離部屋(居間)で寝かせて後は母さんが面倒を見てくれるのだが…。

なんと今日は母さんがいない。

同窓会で遅くなると言っていたし、父さんもいつも通り帰りが遅い。

んで、兄と弟達はまだ反抗期が抜けきっていない。

………僕が面倒みるしかないのかよ。

「おそ松？起きてる？」

居間に入ると、おそ松が苦しそうに寝ていた。

額の汗を軽く拭ってやると、ピクリと動き、うっすらと目が開く。

「あ、起きた」

「ん…、ちょろまつ？」

「うん、そう。チョロ松。氷枕とタオル取り替えてくるからちょっと待ってろよ。」

そう言い、立ち上がるとTシャツの裾をくん、と引っ張られる。

びっくりしておそ松のほうを見ると、裾を掴んでいたのは案の定おそ松だった。

「やだ…、行かないで……。…おにーちゃん寂しがってるよぉ？」

風邪特有の心細さから、こんな事を言ったんだろう。

それでも、普段見れないおそ松に少しドキッとした。

「…僕はどこにも行かないよ。」

そう言ってみせると、おそ松は安心したのかまた眠りについた。

おそ松の頬には、つぅ、と一筋涙が流れた。

なんの涙かは分からない。

僕はその涙を指で拭ってやる。

「おやすみ、おそ松。」

これはおそ松が僕に、最後に見せた涙だった。