【文豪ストレイドッグス】蜂の在り処 4章

169針 ページ29

No side


Aは入ってきた人物を予測していたように、扉の方に目を向けることなく声を発した。



『ありがとね、助かった』



云われた人物は余程驚いたのか、暫く棒立ちになっていたが直ぐに大股でAの元に近づいた。




「目ェ覚めたのかッッ！！」



叫ぶような大声が降り注ぎAは僅かに顔を顰めた。




『あの、一応怪我人だから……中也くん』



中原はAの目が自分に向けられたことに安心して息を大きく吐いた。





「善かった……」




ベッドに手をついて項垂れる中原の頭を、Aはゆっくりと撫でた。





『色々ありがとう。

心配と迷惑かけちゃってごめんなさい』




力なく笑うAに、中原はAの手を掴んで




「この莫迦野郎」




と睨むが、その声には心配と安堵が入り交じっていた。





『はいはい、私は莫迦です』



クスリと笑ったAは巫山戯た冗談を云いながら体を起こそうとする。




「おい、まだ寝とけ。


首領が云うには今回は本気で危なかったらしいぞ」



しかしそれを阻むように中原がAの肩を押さえた。



渋々Aは体から力を抜いて、枕に頭を沈めた。





『やっぱりね、そんな気はしてたよ』




Aは大して驚きもせず、詰まらなさそうに目を細めた。



「お前からの電話で秘密通路にいるって聞いた時は心臓が止まるかと思ったぜ。


しかも、直ぐにお前の声が途切れた時の俺の焦りがお前に判るか？」




説教じみた口調にAは苦笑するしかない。



『悪いとは思ってたよ。

ただあの時は本当に意識が朦朧としてたし、貴方達に頼るしかなかったんだ』




「はぁ……」



中原の深い溜息を聞いてから、微笑んでいたAの表情は一変する。





『それで、今の外の状況を教えて欲しいかな』




真剣な声のAに、中原は傍にあった椅子に座って膝に頬杖をつく。




「とりあえず、探偵社は政府に追われてるな。


なんでも、《猟犬》部隊が動き始めてるみてぇだ。


太宰のポンクツも完全に拘束されてどっかに移送された」



『想像していたこととはいえ、結構厳しいな。


それに《猟犬》がこんなにも早く動き始めるなんて』



「《猟犬》の異能はバケモンらしいからな。

残念なことに俺らもそいつらの異能までは知らねぇが、Aもアイツらとやり合うのはキツいと考えた方がいいぜ」



『判ってる……。



【天空の蜂】も……今のままじゃ勝ち目がないな…』



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