間幕 2-2-2 ページ16
「ならばさしずめ君は、悪魔に情報を売る死の鼠だな」
澁澤がフョードルを見る。
「ここのコレクションの半分は、君から買った異能者の情報をもとに集めたからな。
おかげで都市全体を覆うほどの、この巨大な霧の領域を造り出せた…」
澁澤の″霧″に襲われた異能力者からは、異能が分離して能力者を襲う。
もし異能力者が自らの異能を撃退し、倒すことができたならば、異能は所有者のもとに戻る。
しかし、倒すことができなければ、どうなるか?
答えが、このドラコニアの眺めだ。
異能者は自らの異能に殺され、異能は赤い結晶体となって澁澤に蒐集される。
「だが、とうやってあれ程の情報を集めたのかね?」
澁澤が試すようにフョードルに問いかけた。
「鼠は街のどこにでもいるものですから」
フョードルは肩をすくめてはぐらかす。
「ニャア」
太宰がつまらなそうに呟いた。
その背後で棚の一角が不意に光を放つ。
光は輝きを強めて凝縮され、やがて赤い結晶に変化した。
「またひとつやってきたようだ」
澁澤が新たな結晶に目を留めた。
「ヨコハマの何処かで異能力者が死んだ。しかし……」
澁澤の声は冷淡で熱を持たない。
新しい結晶に目が向いたのも一瞬のことで、すぐに視線は中央の台座へと戻される。
「この棚に収まるべき唯一の異能がなくては…意味など無い」
空虚な台座に手を差し入れ、澁澤は囁く。
「幾ら集めようと──…」
澁澤の声は、虚空に吸い込まれるように消えて行った。
そして思い出したようにAを見る。
「君の異能は何かが違う……だが私の求めているそれとは違うようだ」
その言葉にAは澁澤を見つめ返す。
「君も異能が分離し、殺されかけた。
運良く逃げて此処に辿り着いたようだが…その状態では私には勝てやしない」
Aの頬や額には切り傷や打撲の傷があり、それは体にもあり、細かい傷が所々Aの洋服を赤く染めている。
「君の異能も君を探しにやがて此処に来る。
そして君が殺されれば、また私のコレクションが増えるだろう。
君の結晶が棚に並ぶのが楽しみだ」
Aは澁澤の言葉に一切反応せず、顔色も変えず、ただ真っ直ぐに澁澤を見ていた。
「太宰君、彼女は君の仲間で、想い人ではないのですか?」
フョードルが太宰に問いかける。
「今となっては関係ないよ」
太宰はAを冷たく一瞥してから感情無く、口にした。
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jumpcontrolbear(プロフ) - 消しゴムクイーンさん» コメントありがとうございます!!そうだったんですか……ぜひ余裕がありましたらDVDでご覧下さい!終始悶えます(笑) (2018年9月9日 1時) (レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
消しゴムクイーン(プロフ) - こんにちは。DEAD APPLE…私、見れなかったんですよ!見たかった……これからも頑張ってください!! (2018年8月15日 13時) (レス) id: b53efceb36 (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - なたさん» コメントありがとうございます!!本編の方も読んでくださってるんですね!ありがとうございます!すごく嬉しいです!更新頑張ります! (2018年5月4日 23時) (レス) id: c47121f885 (このIDを非表示/違反報告)
なた - このシリーズめっちゃ好きなのでデッドアップル編まで読めて嬉しいです!これからも頑張ってください (2018年5月4日 22時) (レス) id: a61dc9da8f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:だし丸 | 作成日時:2018年3月23日 18時