間幕 3-1 ページ17
霧の中心に立つ塔のなか、幾つもの結晶体が飾られたドラコニアに、太宰治は立っていた。
近くには変わらず拘束されたAが俯いて座り込んでいた。
Aはピクリとも動かず、部屋にはシンとした静けさが漂っている。
太宰もAも言葉を交わすことなく、何かを待っているかのようだ。
壁を埋め尽くす結晶体はどれも赤く血の色に輝いていて、ひとつひとつに込められた異能者達の生と死を感じさせる。
無言で結晶体を眺めていた太宰の背後で、扉の開く重い音がした。
太宰とAがそちらに目を向けると、そこにはフョードルの姿がある。
「計画通りですね」
云いながら、フョードルは後ろ手に扉を閉める。
繊細な指で鍵を持ち、手品めいたしぐさでまわす。
カチリと錠のかかる音がした。
これでもうドラコニアの中には三人だけだ。
澁澤がいない状況で、あえてかけられた鍵からは秘密の香りが漂う。
「ああ…計画通りだ」
太宰は静かに頷き、一つ息を吐いた。
それから足早にAの元に近づくと、しゃがんだ。
「待たせてしまったね、A」
太宰はどことなく辛そうな声でAの手を拘束していた鎖を外す。
ジャラリと音がしてAの手首から鎖が離れた。
『待ちくたびれたよ』
Aは心底疲れたという声で、拘束されていた手首をさする。
その手首にはくっきりと鎖の赤い跡が残っていた。
「…済まない」
太宰は悲しそうにそれを見つめながらAの手首に触れる。
『やめて、まだ終わってないんだから』
Aは諭すように太宰に云いながら、立ち上がった。
ふらつくAの体に、太宰はすかさず手を添えて支える。
Aはそれにフッと優しく微笑み、突然切り替わるように真剣な表情になる。
『ところで、貴方が私達と組んだ本当の理由はなに？』
Aはドラコニアの縁を歩いていたフョードルに問いかける。
「ぼくにとっての世界のあるべき姿を求めただけのことです」
棚を見つめながらフョードルは歩く。
「ただ、余興は多い方がいいでしょう？」
フョードルの手が棚に伸び、細い指が二つの結晶体をつまみあげた。
太宰が、フョードルの余興という単語に反応した。
警戒心を解かない眼差しでAもその素振りを見つめる。
二人がフョードルに向ける眼差しは、意外なほど冷淡だ。
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jumpcontrolbear(プロフ) - 消しゴムクイーンさん» コメントありがとうございます！！そうだったんですか……ぜひ余裕がありましたらDVDでご覧下さい！終始悶えます（笑） (2018年9月9日 1時) (
レス) id: 10ce31b7ea (このIDを非表示/違反報告)
消しゴムクイーン(プロフ) - こんにちは。DEAD APPLE…私、見れなかったんですよ！見たかった……これからも頑張ってください！！ (2018年8月15日 13時) (レス) id: b53efceb36 (このIDを非表示/違反報告)
jumpcontrolbear(プロフ) - なたさん» コメントありがとうございます！！本編の方も読んでくださってるんですね！ありがとうございます！すごく嬉しいです！更新頑張ります！ (2018年5月4日 23時) (レス) id: c47121f885 (このIDを非表示/違反報告)
なた - このシリーズめっちゃ好きなのでデッドアップル編まで読めて嬉しいです！これからも頑張ってください (2018年5月4日 22時) (レス) id: a61dc9da8f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：だし丸 | 作成日時：2018年3月23日 18時
