さよなら姉畑先生 ページ24
それからしばらくして、私は村の様子を見に行った。どうやら警備はそこまで慎重ではないらしく、見張りはまばらだった。
「そこで何している?」
背後からかけられた声に振り向くと、そこにアイヌの男性がいた。確か、キラウシという名だったはずだ。
「…少し散歩をしていました」
「そうか。和人にとってはこの村は物珍しいだろうからな」
「はい。とても興味深いです」
私はそう言って微笑むと、キラウシさんも笑顔になった。やはり、この村のアイヌの人たちは悪い人たちでは無いのだと思う。
ふと、彼が手に持っている籠に視線を落とすと、そこにはたくさんの山菜が入っていた。
私が見ていることに気づいたのか、キラウシさんが籠を持ち上げる。
「今から夕飯の準備をするんだ。よかったらアンタも手伝ってくれないか」
「いいんですか?」
「あぁ。どうせ外にいる軍人さんにも持っていくつもりだったし」
そういって彼は私をチセまで案内してくれた。
キラウシさん達の夕飯の準備を手伝いつつ、私はこの村の人たちの生活についえ聞いた。どうやら村によっても個性があるらしく、アシリパさんがいたコタンとも違った特徴が見られた。
そして、キラウシさんの作る料理はどれも美味しかった。家へ泊まっていったらどうだと言われたが、自分だけ泊まるのも悪いので丁重にお断りした。
尾形さんへ料理を持って行くと、「何餌付けられてんだ」と小馬鹿にされたのでムッとしたが、確かにその通りなので何も言えなかった。
「村はどうだった。何かわかったことはあるのか?」
食事を終えると、尾形さんが尋ねてきた。
「えぇ……。一応警備の様子は確認しました。ただ、村の出入り口や檻の前もあまり警戒していないようだったので、恐らく大丈夫でしょう」
「なら問題はないな。明日、谷垣を連れてここを出るぞ」
「わかりました」
私は小さく返事をした。
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作者名:塩わさび | 作成日時:2022年8月11日 22時