参拾 落下と腕 ページ30
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俺の声に合わせたのか、少し大きくなって帰ってくるAさんの声。往復するのも面倒だし、量自体はそんなに多くないので了解しました! と頑張って方向転換を始める
そこまではよかったんだ。
振り向いた所には、さくらさん。しかも丁度ちぎれているお腹の部分。彼女は俺が往復すると思ったのだろう、ぶつかるような形で。
俺の頭が、ちぎれたお腹を、通り抜ける。
『……あら、しつれ』
「ギャァァァァアア!!
でた………ってうわ!?」
さくらさんの声なんか耳にも入らず。
慌てて身を引く。
と同時に投げ出される体。そして思い出す。
あれ? 俺って今、階段の上に──
刹那落下を始める俺の体。
待って、やべぇ……ッ!!
咄嗟の判断で2枚の布団を下に投げ捨て、その上に落下する。すんません三成様、刑部さん。俺は命の方が大事でした、と心で謝りながら。
そしたら、うっ、と布団の下から聞こえる呻き声。そして、ごろん、という無機質な音。
一瞬ん? と思ったが上から降ってきたさくらさんのAさんを呼ぶ声にハッとする。
「す、すすす、すみません!! 大丈夫ですか!?」
大丈夫な訳がない。
三成様や刑部さんは警戒していたけど、全体的に肉付きの悪くひょろっとした体。重いものなんて何ひとつ持てなさそうな。
そんな上に俺が乗ったんだ。決して重い方ではないけど、鍛えてるのは鍛えてるし、決して軽くはない。
「はい、何とか……どうにか布団に救われました、私も。咄嗟の判断がよかったですね」
「いや、ほんとすみません。起きられますか?」
とりあえず急いで彼女の上から降り、布団を剥がして。空いた利き手を彼女の左手に伸ばしかけて、体が固まる。
無い。
彼女の左手の、肘から先がない。
サッと血の気が引き、その座り込む足元を見ると、左手の肘から先の部分が転がっている。
しかし、一切流血はしていない。
あ、あ、お、俺…………
「ぎぃやぁぁああ!!」
やばいやばいやばい、思わずその腕を拾い上げて風呂場まで全力で走る。三成様以外の大概には捕まらないはずだ。大丈夫。
慌てて洗面所の扉を開け放つと、既にお2人は上がられたあとで、丁度刑部さんの包帯を巻き終わったところだった。
いやに迷惑そうな顔を全面的にされたが、そんなのはいい、いいんだ今は。
「たっ、助けて、俺、これ……あの人の腕……!」
俺が拾って来た腕を掲げると、流石のお2人も、みるみるうちに顔を歪ませた。
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さしみ(プロフ) - 初コメ失礼します!長らく更新させてないようですがとても面白かったです。いつか更新されるようならまた読みに来たいです。更新されるようなら無理せず頑張ってください。 (2020年12月4日 13時) (レス) id: 52bb9638d4 (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - 御津さん» お返事が遅くなりすみません!御津さん初めまして、ご感想とリクエスト、ありがとうございます。そろそろ1巻をキリよく終わらせるのに誰か居ないかなぁ…と迷っていたところでした是非瀬戸内にはトリを飾ってもらおうと思います!今後も完結までよろしくお願いします! (2020年2月3日 18時) (レス) id: 959b48d95f (このIDを非表示/違反報告)
御津(プロフ) - すっごく面白いです!よろしければいつか瀬戸内(毛利と長曾我)も宜しくお願いします。更新お待ちしてます (2019年11月15日 17時) (レス) id: 672fceb52b (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - 旅人さん» 旅人さん初めまして、温かいお言葉ありがとうございます!お市様は私が薙刀時代しか詳しく知らないのもあって薙刀にしました笑今後とも頑張りますのでよろしくお願いします!(また、他に誰か呼んだら面白げな方とかいればお気軽にお教え下さい!) (2019年7月17日 7時) (レス) id: 959b48d95f (このIDを非表示/違反報告)
旅人(プロフ) - コメ失礼します!主人公の周りが賑やかでとっても面白くて、あとその、お市様の薙刀時代(?)好きなのでめちゃんこ嬉しかったです…んんもう大好きです!これからも密かに応援させていただきます!無理のないよう、更新頑張ってください! (2019年7月16日 20時) (レス) id: e903332221 (このIDを非表示/違反報告)
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