看板娘8 ページ9
「わはは!ようやく呼んだのう、A!」
「わ、わた、私は、夜一様になんと恐れ多い……!!」
気にするなと言うておろうに、と夜一様がまた呆れた笑顔を見せる。
「Aサン、ボクのことはどうスか?ホラホラ、喜助さん♡って呼んでくださいよ」
ニコニコとそう言う浦原さん。目線を合わせてきたのを好都合と、思い切り顔面に一発くれてやった。昨日分の怒りも合わせてるのでそこそこ重めに。
「痛い!」と殴られた鼻先をさすって、浦原さんは言う。知ったことではない。今更喜助さんなどと呼ぶのはどうにも気恥ずかしい。ある意味、夜一様よりも呼び方を変えたくない相手なのだ。
「…公衆の面前でない以上、必要ないでしょう。夜一様……さん、と違って、慣れる必要もないですし」
つれないッスねェ、と残念そうに言う浦原さん。夜一様…さん、はずっと楽しそうだ。もうこれで私は失礼します、と少しの不満を込めて二人に背を向ける。特に用がある訳では無いけど、入学式の時からずっと気がかりなことがあった。
校舎内でもどこでも、その居場所は明白だ。まっすぐその男の元へ歩く。視界にそれを見つけて、声をかけようともう一歩踏み出した。
「おい、そこのオレンジの君__」
「?」
……彼が振り向いたその瞬間、私は木の上で浦原さんに口を塞がれていた。
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作者名:名無し | 作成日時:2022年2月21日 5時