看板娘234 ページ39
「また貴女と尸魂界に来ることがあれば、ここに来たかったんスよ。結局言えずじまいでしたから」
浦原さんは笑う。その目はいつにも増して真意が見えない。言えずじまい、って何の話ですか。そう聞く前に、浦原さんは帽子をとって私を見た。片手で帽子を胸に添えて、一言言う。
「……お帰りなさい、Aサン」
そう言った浦原さんは、心底嬉しそうに目を細めて笑う。ぇ、と小さく口から声が漏れた。
頬に一筋、水が流れた。堰き止める何かを無くしたように、ボロボロと涙が溢れ落ちる。
「っあ、あれ、何で……やだ、すみません、すぐ……すぐ、止めますからっ」
「止めないでいいんスよ…やっと、泣いてくれましたね」
百年前のあの夜から、現世に降り立ったあの時から。もう泣かないと決めたのに。涙なんて見せてたまるものか、弱さは全て無くせ、と。自分で決めたことなのに。浦原さんは目を擦る私の腕を優しく掴み取る。
「やだ、はなして……見ないで下さい、こんな顔、みないで」
「いいんスよ、泣いて。アナタは泣いていいんだ、誰も責めないし、もう誰もアナタを傷つけない。…ここに居るのは、ボクだけっスよ」
百年前、この部屋で泣いた時に貴方は居なかった。貴方は藍染の罠で私の横に居なくって、この部屋には藍染が来て。私は何も出来ずに泣いていた。
でも今は違う。浦原さんは私の目の前にいて、優しく笑って私を抱きしめて下さった。導かれるまま、泣きながら、背中に腕を回すとぎゅうと抱きしめる力は強くなった。酷い顔なのに、浦原さんは愛しいものを見るみたいに笑って私のびしょびしょの頬に触れる。
「……浦原、さん。う、らはらさん、うらはらさん……!やだ、もう、もう何処にも行かないで………お傍にいさせて、もう離さないで……!私から離れちゃ、嫌です………!!」
ぎゅううっと羽織にしがみついて泣きながら縋る。なんて滑稽なんだろう。それでも浦原さんは、私に答えるように強く強く抱き締め返してくれた。ただそれだけで、自分の無様なんてどうでも良くなった気がした。
わんわん泣いて、縋って、いつの間にか夜は更けていった。
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渚(プロフ) - BLEACHに再熱した者です!この作品とても好きです!浦原さんカッコイイです!!引き続きお話読めるの楽しみにしています! (2022年9月5日 18時) (レス) id: 9dd9702176 (このIDを非表示/違反報告)
はっか(プロフ) - はわ、、BLEACH再熱してしまってこの小説に辿り着いて刺さりすぎて徹夜で全て読んでしまいました、、、!!すごく好きです理想の浦原さんで泣きそうです!!応援してます!!! (2022年6月21日 20時) (レス) id: 849b00c654 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:名無し | 作成日時:2022年6月20日 19時