忠義の程は……Ⅰ【あんスタ】 (ページ10)

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8.楽屋ページ10

　
　
　
　
「ふふ，今日のライブは自分でも上手くいったと思います！」
　
「うんうん，俺も」
　
ライブを無事終了させ，snowfallの二人は楽屋へと帰った。衣装を着替えて帰る支度を終わらせてから，fineの人たちに挨拶をして彼らと一緒に帰る予定である。
　
「fineの皆さんのMCぶりも流石でしたね」
　
「天祥院先輩がだいぶ楽しんでるみたいだったね。急に，あの日々樹先輩の鳩にはびっくりしたけど」
　
「台本に無い突然のパフォーマンスはほどほどにして欲しい物です……」

お互い今日のライブの感想を言いあいながらも無事終わった事に安心して，笑顔を見せた。その時，大きな足音と共によく聞く声が二つ聞こえてきた。
　
「坊！！なんであかんねん！わし関係者とちゃうんか！？」
　
「違うでしょう！貴方の何処が関係者ですか！完全に今日はfanとして来てたではありませんか！」
　
「うげー」とAらしからぬ声をあげて，扉から一歩遠ざかった。涼も声の正体が分かり，苦笑いを零す。
　
「愛されてるじゃん，Aちゃん」
　
「やですよ～ここまで来たらただの迷惑です」
　
勢いよく扉が開かれ，私服に着替えられたA達の呆れた表情が目に入る。こはくは，そんな二人の様子(特にAであるが)を見てムッとするとずかずかとAの方へ近づいた。
　
「はよ，帰ろ」
　
「……………は？」
　
Aの腕を掴み，離さんとするこはく。Aはそんな様子のこはくを見て数秒遅れで状況を理解し，急いで離れようとした。
　
「急に何ですか！私この後も予定有りますから帰れないんですけど！」
　
「構わん，そんなもん涼はんにいって帰ればええやろ」
　
「俺を何だと思ってんの」
　
「…………いざという時頼れる先輩」
　
「悩むな！！あと『普段』は頼れないみたいな言い方するな！！！」
　
華麗なツッコミをするがこはくはそんな事気にも留めず。Aを「よっこいしょ」と軽く抱えると靴を奪った。一瞬の出来事に，誰も何も反応できなかった。
　
「ほ，ほんと何なんですかさっきから！！この後予定があるんですってば！！」
　
「そんなもんええっていっとるやろ！はよ帰るんや，わしと一緒に」
　
(今日くらいは，わしに隣にいさせてくれや…………)
　
「嬢には，穢れない綺麗な道歩いてもらわな困るねん…"一族皆が"」
　
速足で進むこはくの後ろを，司は黙ってついていった。心配そうな目で，こはくを見つめながら。