左耳のピアス (ページ5)

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episode5 ページ5

まだ夏の暖かさが残る

それでも夜は冷え込む季節になったこの頃

明日から秋大会がはじまる

『うわー…遅くなった』

初戦の相手を調べていたらいつもより遅い時間になってしまった

外はもう真っ暗

隣接している屋内練習場を除くと、数人が素振りをしていた

最後に一目でもと思い成宮先輩を探すが見当たらない

カ「A？まだ帰ってなかったのか？」

『あ、カル先輩…服着てください』

夜は冷え込むというのに上半身裸のカル先輩

カ「鳴か？」

『はい、でもいないみたいですね』

カ「たぶん走りにでも行ってるんじゃねぇかな」

『そうなんですね…ありがとうございます』

カ「おう、気をつけて帰れよ」

『はい！また明日！がんばりましょう！』

カル先輩に見送られて帰ろうとグラウンドの横を歩いていると

『…先輩だ』

誰もいないグラウンドのベンチに座る成宮先輩を見つけた

顔を下に向けていて、どんな表情をしているかまではわからない

ゆっくり近づいてさっき買ったスポドリを成宮先輩の隣に置く

成「なに…おまえか」

ぱっと顔を上げた成宮先輩は、私と目が合うと残念そうな顔をした

『お疲れ様です、明日から試合なんでオーバーワークは無しですよ』

成「おまえに言われなくてもわかってる…てか、これなに」

『なにって、差し入れです』

成「……」

一向に私があげたスポドリを手にしない成宮先輩

成「変な薬入れてないよね」

『それさすがに未開封ですよ』

怪訝な顔でスポドリを眺める成宮先輩が、何だかおもしろく感じた

成「じゃ、いただきます」

やっと口をつけた成宮先輩を

『……媚薬入りです』

そう言ってからかえば口に含んだスポドリを盛大に吹き出した

成「なっ！え！」

『嘘ですよ笑』

成「おまえほんと嫌いっ！」

『まぁ、ほんとに入れてそのままあんなことやこんなことしてもよかったですね』

『次はそうします』

成「しなくていいから馬鹿！」

ぱしっと叩かれた後頭部が痛む

『普通こんなにかわいい後輩叩きます？』

成「かわいくない」

『ツンデレですね、成宮先輩のほうがかわいいです』

成「黙れ」

そんな言い合いをしていると、だいぶ時間が経ってしまったらしく、慌ててスクバを肩にかけ直す

『それでは、お疲れ様です』

『明日から、期待してますよ』

成「……おう」