左耳のピアス (ページ4)

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episode4 ページ4

『髪よし、顔よし、ピアスよし』

鏡の前で入念にチェックし、家を出る

最近は、夏を甲子園という夢舞台で終え、秋大会に向けて新チームがスタートした

それなりにマネージャーもやることが多い

『よいしょ、えーっと次は……』

休憩のためにドリンクを人数分ベンチに置き、次はスコア整理をしようと、部室まで歩く

『あ、成宮先輩！』

途中のブルペンで成宮先輩を見つけ、その足が止まる

成「ｹﾞｯ……」

心底嫌そうな顔

『今日もかっこいいですね！』

成「うるさい、おまえいたら集中できない、散れ」

『おぉ…辛辣なお言葉ありがとうございます』

成「馬鹿じゃないのおまえ」

呆れ顔の成宮先輩に名残惜しく別れを告げて、部室へ急ぐ

今日抽選会の秋大会

抽選結果の報告を待ちながらスコアを整理していく

ﾊﾞｻｯ

『うわっ』

頭上に落ちてきた1冊のスコアブック

『これ、いつの』

ぺらぺら捲ると、それは去年のもの

『これ……お姉ちゃんの字だ』

春に行われた練習試合のスコア

たった1試合

お姉ちゃんが生前残したものだった

綺麗な字で書かれたそれは、試合状況を事細かく書かれていた

『これの…代わり』

私は、こんなスコアを書ける人の代わり

馬鹿みたいに小さくなる自信

『あぁ……ダメだ』

こんなんじゃダメ

こんなんじゃ、お姉ちゃんとの約束を守れない

スっと腕が左耳に伸びる

ピアッサーでパチンと開けた時の、あの痛みが蘇る

『大丈夫』

私はやれる

『笑え……笑え…』

引き攣る顔の筋肉を無理やり動かして

笑顔をつくる

よいしょとスコアブックを胸に抱えて部室を出る

向かう先は、ブルペンにいる貴方のところ