Call My Name ！ Ⅱ (ページ37)

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#84 ページ37

　＊

「囁かれた、じゃないわよ！」

「ぐっ、いったいよ、桜」

「これは朱ちゃんが悪い！」

「図書室では静かにしたまえ」

　桜の武器・辞書が私の脳天を思いっきしぶつけられた。しかもここは図書室。静かな空間には似つかない大きな音と声である。…………私と桜で今日は勉強会をしていた。ほかのメンツは部活で来れなかったから。で、桜が怒ってる理由は………

「黄瀬くんへの態度、あれはなんなの！？」

「べ、別に………どうもしてないよ」

「嘘つけ！！！」

「静かにしたまえ」

　無機質な図書委員の注意に臆することなく桜は言葉を紡いだ。

「朱ちゃん最近おかしすぎ！」

「おかしくない。私はアイツと話す理由がないだけだ」

「今までだってそうだったじゃない！けど話くらいしてたし一緒にいたじゃん！なのに突然無視とかして………」

「無視は前からしてた」

「そうじゃない、そうじゃなくて！」

「おほんっ！！！！」

「「！」」

　大きな咳が聞こえた。みると、先程から注意してきてた眼鏡の気難しそうな図書委員が腕を組んでいる。

　細いくせにこれでもかってぐらい威圧してる。重々しく口を開いた。

「仏の顔も三度まで、私の我慢は2度までです。

　さようなら」

「わっ！」

「うおっ！」

　私達は図書室から締め出された。ケツを打ち付けて痛い。尻を摩りながら言う。

「…………出禁か。きついな。教室は委員会が使ってるし…………どこで勉強しようか………」

「………朱ちゃんの家、行こ。」

「？近いし別にいいが、ファミレスとかでも＿＿」

「朱ちゃんちがいい。………黄瀬くんのこと、ちゃんと聞きたい。

　ね、何があったか、教えてくれない？」

「……………………………」

　黄瀬、という言葉にどき、と胸が鳴った。黄瀬……………桜の言った通り、最近私は黄瀬を本格的に無視するようになった。だってアイツの顔をみると、平然と居られないんだ。

　あの顔が見たい、あの唇の柔らかさだって＿＿感じたい。だから距離を取ってる。誰にも言わず、何事も無かったかのように過ごそうとしてる。でも………

　私は桜の顔を見る。桜は＿＿＿いつもの女の子らしい可愛い顔にこれでもかってくらい眉を寄せてる。怒ってる時の顔。そして私は知ってるんだ、この顔をした桜は私の本心を聞くまで絶対引き下がらないと。

　そこまで思い至って………私は大きく溜息づいた。