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＊
「………………………って、訳」
朱は自分の家に来た桜に話した。唇を重ねたこと、デートに誘われたこと、保健室で大事な人と言われたこと、ボクシングの話をした時に悲しそうな顔をしたこと、バスケの練習試合の時にみせた笑顔が忘れられないこと、あの日の夕方に言われたこと…………………私が思ったこと、感じたことも含めて全部包み隠さず話した。
桜は、静かに聞いていた。いつもみたいに騒ぐことも無く、ただ無言で。たまに涙ぐみながら私の拙い言葉を聞いてくれた。話終えると、桜は初めて私が出したコーヒーを両手で持った。
「………つまり、朱ちゃんは黄瀬くんの一挙一動に動じちゃうんだね？」
「ああ。………自分でも、わかんない。なんで？アイツは私に付き纏ってるだけだよ？それだけなのに、私は………なんでアイツの色んな顔を見て胸が痛くなったり顔が熱くなったりするんだ。
なんでもっと見たいとか、思うんだ。
私はなんかの病気か？ボクシングが出来なくなるとかないだろうな………でも日常に支障を来たしてるし………」
「朱ちゃん、落ち着いて」
「でも」
「いいから」
桜はそう言うと、立ち上がって私の隣に来た。私の両肩に手を置いて、優しく聞いてきた。
「いい、朱ちゃん。それはね、病気じゃない。当たり前のことなんだよ？だって、朱ちゃんは黄瀬くんのことが"好きだ"って証拠だもん」
「す、き…………………？」
すき、スキ、好き。
好きってなんだ。私があの軽くてヘラヘラしてる奴が好きって、
「………なんかの冗談？」
「冗談じゃないよ。例えば………考えてみて」
「考えてもわからなかった」
「いいから！ちゃんと目を閉じて、胸に手を置いて考えてみて！」
「………………」
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作者名：O | 作成日時：2021年10月29日 16時
