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＊
私は言われるがまま、そうした。桜の静かな、それでいて圧がある声が鼓膜を揺らす。
「そう。それで黄瀬くんを思い浮かべて？黄瀬くんが他の女の子と楽しく話してる。朱ちゃんに見せてる笑顔、悲しい顔、真剣な顔、真っ赤な顔………色んな顔をその子に見せてる。」
桜の言葉に、私は黄瀬の色んな顔を思い浮かべる。今まで私にみせてきた顔で、ほかの女子と話してる。コロコロと変わる表情を見て、ほかの女子は笑みを浮かべてる。幸せで穏やかな光景だ。だけど………
もや、………
私の心にはもやが広がる。今までに感じたことないくらいどす黒い感情が渦巻いて、ひとつの事を述べている。
"笑うな、触るな、近づくな"
夢と同じ声。けれど種類が違う。痛いとか苦しいとかじゃない、暴力的な言い方。これは………
「いや、だ…………」
「どう、思った？朱ちゃん………どう思ったの？」
「アイツが、他の女の子と話してるの、やだ。私に向けてる笑顔、向けるのやだ。
どうして、アイツはわたしのじゃないのに、どうして私は＿＿」
「………それが、恋よ」
「こい？」
私は桜を見る。桜は＿＿＿＿優しく微笑んでいた。私から手を離し、胸に手を当て、愛おしげに言葉を紡ぐ。
「他の女の子に近づかないで欲しい、他の女の子と笑って欲しくない、他の女の子と一緒にいて欲しくない、………それは、嫉妬。自分にだけそうしてほしいと思うのは独占欲。
全部全部、"好き"だから持つもの」
「じゃあ、私＿＿＿」
「そ。………朱は、きっと黄瀬くんのことを好きになってるんだよ。恋してるの」
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作者名：O | 作成日時：2021年10月29日 16時
