明 ページ7
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蓋つきの小鍋と、いくつかの小鉢をテーブルに並べて、相葉は大野の傍にしゃがんだ。
大野さん、と呼びかけたら、ふっと音もなく瞬きをしてから、こちらを向く。
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「今日は雑炊にしてもらいました。季節の野菜が入っているそうです。そんなに熱くはしてません。なんせ外が寒くて(笑)運んでる間に冷めちゃいそうでした」
相葉が言って、きゅっと口角を上げて気持ちよく笑った。
笑顔がまぶしいだなんて、ただの慣用句だと思っていたけれど、本当にまぶしいような気がして、大野は目を細めた。
本当に好ましい笑顔だった。
その笑顔に対して、なにか返したくて、しかし渡せるものがなにも無かった。
同じように笑おうにも、頬がうまく動かせなかった。
「…月は……」
笑えない頬を誤魔化すように、口が走った。
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「月は…まだ……、あっち側に… だから見えなくて」
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----『今日は晴れてたから。綺麗でしょう。三日月も』
ずいぶん間の空いた、遅すぎる返事だった。
相葉が、はっと息を呑むのが、正面から良く見えた。
「…声 が…、大野さん」
わ、という形に開いた口が、しばらくして、泣きそうに歪んで、そこから先は俯いてしまったので、見えなかった。
「…そっか…、そっかあ…声が…、……良かった、ほんとに…」
良かったよかったと、相葉は何回も繰り返し言った。
顔を上げたときに、優しく笑った目が潤んでいた。
その水の膜が、自分のことを思ってできたものだということが、大野は信じられなくて、少しだけ、嬉しくて
鼻の奥が、じわりと熱くなる。
「…今日で…、ちょうど2週間になります」
ず、と鼻をすすった相葉がそう言って、畳に垂れていた大野の手を握った。
ひどく冷えていた。相葉はそれを、擦って温めた。櫻井のときと、まるで同じだ。
この宿の人はみんな、こうして手を温め合うのだろうか、と大野は不思議に思いながら、それでも気持ちよく受けた。
それにしても、みんな、手が温かいのだ。
「大野さん、あのね…」
相葉の強い目が、まっすぐに大野を見た。
今までにないような感じだった。何かを、伝えようとするときの目。
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きんにく(プロフ) - イチさん» なんとー！そんなに大切に読んで頂けるなんて幸せすぎます。本当にありがとうございました。これからも頑張ります♪ (2021年1月18日 23時) (
レス) id: 527827598f (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - もふもさん» こんな未熟な作品に涙などとてももったいないですが、嬉しいです^^そう言っていただけると頑張れます！ありがとうございました。 (2021年1月18日 23時) (レス) id: 527827598f (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - 律さん» 律さん、最後まで読んで頂いて本当にありがとうございます！心温まる最後にできていたのであればとてもとても嬉しいです♪ (2021年1月18日 23時) (レス) id: 527827598f (このIDを非表示/違反報告)
イチ(プロフ) - きんにくさん、こんばんは。最終回を読みたいのに、終わってしまうのがもったいなくて、ちょっと読んではやめを繰り返していました。毎回思いますが、きんにくさんの描く世界が美しすぎて、読んでいて幸せな気持ちになりました。ありがとうございました。 (2021年1月17日 21時) (レス) id: 9e72143338 (このIDを非表示/違反報告)
もふも - きんにくさん、完結ありがとうございます！ きんにくさんのお話には毎回泣かされます(/ _ ; ) 心温まる場面が多くて、つい何度も読んでしまいます。素敵な作品ありがとうございました！これからも応援してます！！！ (2021年1月17日 1時) (レス) id: f5de961c82 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きんにく
| 作成日時：2021年1月2日 0時
