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「本当はもっと…お腹いっぱいで、もうこれ以上ないくらい幸せになって、帰ってもらいたかったんです。いつも、誰でも、そうなってほしいって思ってるんです」


じわりと、相葉の下瞼に涙が溜まった。

うるうると揺れるのを、大野は、落ちるな落ちるなと、願いながら見ていた。


「手…こんなに冷たくさせちゃって…ごめんなさい。お食事も…なかなか食べ易いものを、出せなくて」


食事が食べられないのも、手が冷たいのも、ついでに言えば眠れないのも、もっと言えば大野の体調不良はすべて、まったく相葉のせいではないのに、相葉は申し訳なさそうに眉を下げていた。


ぶんぶんと何度も、首を横に振ったら、相葉は困ったような顔になった。


「そうですか(笑)そんなに否定しなくても…、ふふ、でも…」


握った手に、ぎゅ、と力が入る。

包まれた右手ばかりが温かくなっていって、なんとなくで、そうっと、左手もそちらに近づけてみたら

相葉はすぐに、それも一緒に握ってくれた。




「もっと人のせいにして 良いんですよ」




柔らかく降ってきた言葉に、ふっと瞼を持ち上げた。

陽だまりのような声だった。

陽だまりが声を発するのを、聞いたことがないけれど。もしも陽だまりが、一言、わっと喋ったとしたら、こんなふうな声をしているだろうと、大野は思った。



「もっとわがままにして良いんです。自分ばかり守って、良いんです。

 裏切られたら、怒って良いんです。みんなそうしてます。

 そんなに優しく居なくても大丈夫です」



大野は相葉の目から涙が零れ落ちないように、見張っていた。

優しい相葉が零す涙は、おそらく自分のためのものであるからだ。



 「一生懸命に、真剣に生きてても…

 自分が傷つけられたと思っている分くらいは、

 知らないうちに誰かを傷つけているものですから」



手が温まっていくのを感じながら、大野は考えた。


わがままの、わの字も知らないような雰囲気の相葉でも、誰かの前では自分勝手に泣いたり怒ったりするのだろうか。


自分は、どうだろうか。

怒っても泣いても何をしても、だいたいは許してくれるような人が居るだろうか。




「そのくらい鈍感になって、良いんですよ」




ね?と首を傾げるので、大野は、こくりと頷いた。


相葉の言うことには、うんと頷いておけば、おおかたは間違いないのだ。



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霊→←明



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きんにく(プロフ) - イチさん» なんとー!そんなに大切に読んで頂けるなんて幸せすぎます。本当にありがとうございました。これからも頑張ります♪ (2021年1月18日 23時) (レス) id: 527827598f (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - もふもさん» こんな未熟な作品に涙などとてももったいないですが、嬉しいです^^そう言っていただけると頑張れます!ありがとうございました。 (2021年1月18日 23時) (レス) id: 527827598f (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - 律さん» 律さん、最後まで読んで頂いて本当にありがとうございます!心温まる最後にできていたのであればとてもとても嬉しいです♪ (2021年1月18日 23時) (レス) id: 527827598f (このIDを非表示/違反報告)
イチ(プロフ) - きんにくさん、こんばんは。最終回を読みたいのに、終わってしまうのがもったいなくて、ちょっと読んではやめを繰り返していました。毎回思いますが、きんにくさんの描く世界が美しすぎて、読んでいて幸せな気持ちになりました。ありがとうございました。 (2021年1月17日 21時) (レス) id: 9e72143338 (このIDを非表示/違反報告)
もふも - きんにくさん、完結ありがとうございます! きんにくさんのお話には毎回泣かされます(/ _ ; ) 心温まる場面が多くて、つい何度も読んでしまいます。素敵な作品ありがとうございました!これからも応援してます!!! (2021年1月17日 1時) (レス) id: f5de961c82 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きんにく | 作成日時:2021年1月2日 0時

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