柱の少女は、狙われ体質。参

普通の幸せ ページ9

『……実弥が本当は優しいってこと知ってるのは私だけでいいや。』





そう呟いた私は実弥の頬にキスをした。不意打ちのキスに、腑抜けた顔をした実弥は段々と顔を赤くしてそっぽを向けた。




まだ耳が少し赤い。

やっぱり私、実弥のことが大好きだなぁ……。
いちいち愛おしく思ってしまう。




実弥はちょっと乱暴で口悪くて、なんでそんな彼のことを好きになっちゃったんだろうって考えたことがあった。

けど今、答えは明白だ。

表に出さないだけで誰より家族を想ってて、自分の幸せよりも人の幸せを願っている。無限城に囚われていた時、そんな不器用な彼の存在の大きさに気が付いた。

だから私は実弥の隣を並んで歩きたい。優しくて弱みを見せない実弥の手をとって、力になりたかったんだ。









『ねぇ、実弥。私達は家庭を築いておばあちゃんになるまで普通に、幸せに生きることは出来ないよね。』


「……そりゃ、鬼殺隊だからな。けど普通じゃなくたっていいだろォが。俺はAが居て、お館様の役に立てたらそれでいい。」


『私もそうだよ。実弥とこうやって手を繋いでるだけで十分幸せ。けど、鬼を滅するために命は惜しくない。だからさ、戦いの場ではどっちが先に死んでも恨みっこなしだよ！』



私は精一杯の笑顔でそう言った。じゃないとその言葉に気持ちが追いつかなくなってしまいそうだったから。今こうして好きな人の手を繋いでいるのが幸せで、時間が止まればいいだなんて思ってしまったから。

実弥は握った手に力を込めた。そして彼は珍しく言葉をつまらせて、ゆっくりと話した。



「そう……だな……。鬼舞辻無惨や上弦を前にしたら悠長なこと言ってらんねぇからなァ。
でも絶対に“最後まで生きるのを諦めんじゃねえ”。約束しろ。」


『うん、約束する。最後まで、命が尽きるまで、ちゃんと生き抜くよ。』


「あぁ。」


私達は互いの小指を結んだ。









------------------------------------------------
103話104話、内容少し変えました。

いざ手合わせ→←スパルタ稽古

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す