溶け込む ページ31
『まぬけ』
『アホ』
『やり直しだ馬鹿野郎』
「どうすりゃいいのさ!?」
ランドールにお手本を見せて貰ってからちゃんと体を返して貰い、僕はユニーク魔法の練習に打ち込んでいた
が、あれから何週間も練習しているのにランドールからのお墨付きは貰えない
というか絶対見えてない筈なのに隣でダメ出しばかり言われる
何でよっ!
『元々俺の特技だったんだ。それを扱ってた俺から見てお前の擬態は不完全なんだよ。そんなんじゃガキにもバレる。』
「ぐ……」
ぐうの音も出ない僕にランドールはため息をついた
『いいか、イメージだ。周りに溶け込み一体化する感覚を掴め。そうすれば多少はマシになる。どれだけ気配を消すのが得意でもあんな様子じゃ消えたとは言えねぇぞ。』
言っている事は正しいが故に僕は何も言えない
くぅ〜正論なだけにありがたくて寧ろ感謝してる自分がいるのが悔しい!
(一体化、一体化……僕は空気僕は空気どこにもいない空気……!)
散々悩んだ結果、前世で休み時間なんかの気持ちを思い出してみた
周りに存在がバレると何かしら妬まれ口を叩かれるのでとにかく目立たないように静かにしていた
すると周りは気に止めるのをやめて僕を放置した
それが嬉しくもあり寂しくもあったが心の平穏の為にはそれが一番だった
その時を思い出しながらもう一度詠唱してみる
「一人ぼっちの暗闇で
不気味な音に目を覚ます
不安に呑まれたその先は
魂も抜ける恐怖の一夜
叫べ、泣き喚け、俺こそが恐怖の調達屋
__聞こえる?
一瞬ランドールが驚いた顔をした気がした
「ど、どう?」
『驚いた。あんだけムラがあったのに急に良くなりやがった。』
「じゃ、じゃあ!」
『あぁ。まぁ合格だ。』
ようやく合格を貰い僕は安堵の息をもらした
『だが周りに溶け込むときは無詠唱でできなきゃダメだ。あと一週間で物にしろ。』
「はぁ!?んな無茶な!」
『いいからやれ!どうせ馬車の中でぐっすり寝られるんだ、それまで休めると思うなよ!』
「ひぃ!?」
それから馬車が来るまで僕はほぼ寝ずにユニーク魔法の練習に明け暮れた
確かに普段自分から寝ない事は多いけど強制されると結構きつい
寝そうになると魂を弄られてろくに寝られない
馬車が来たときの安堵は計り知れない
母からの見送りを終えて僕は棺に横たわった
「や、やっと、寝れる……」
『おい、荷物は全部いれたか?』
「うん……一ヶ月前に荷造りしたから大丈夫。」
うつらうつらと目を閉じる
棺桶の居心地はとてもよかった
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あんかけうどん(プロフ) - あんぱんさん» ありがとうございます! (9月14日 22時) (レス) id: 8768b9e08b (このIDを非表示/違反報告)
あんぱん - ランドール好きなのでうれしいです! 面白かったです! (9月14日 22時) (レス) @page28 id: f2f05df21c (このIDを非表示/違反報告)
あんかけうどん(プロフ) - 竜の騎士さん» ありがとうございます!嬉しいです! (2021年12月10日 17時) (レス) id: 91a4551153 (このIDを非表示/違反報告)
竜の騎士 - はじめまして。最初から読んでみましたが、とても面白くてすぐにハマりました!更新楽しみにしています! (2021年12月10日 13時) (レス) id: 796a1a3707 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あんかけうどん | 作成日時:2021年11月25日 4時