君に失恋したから髪を染めた【羽風薫】 (ページ21)

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20話ページ21

20話
sideA

どうして薫は助けてくれたんだろう。
ほぼ他人みたいな距離感になっていたのに。
まるで…私のことをまだ…見てくれてるみたいで…。

(自惚れてしまいそうになる…)

だけど、それはいけないことだ。
私にはもう…普通の恋愛に憧れられるような立場じゃないのだから。

だから、忘れなくちゃいけない。
薫への気持ちも。
込み上げてくる想いも。

この手の温もりだって。

ｺﾝｺﾝ

ドアをノックして入ってきたのは英智だった。

英智「無事会えたみたいだね」
A「呪うから」
英智「第一声がそれかい？悲しいね」
A「なんで私には行かせたの…日和も凪砂も私は苦手だって言ったじゃん」
英智「あえてさ。社交界で生きていくんだし多少の好き嫌いは我慢しないとね」
A「…一理ある」
英智「…というか、僕知らないんだよね。どうして2人のことを苦手に思っているのか」
A「え？言ってないっけ？」
英智「聞いてないね」
A「なんてことないことだよ。昔好きな人を小馬鹿にされた…それだけ」
英智「…へぇ」

ニヤつきながらこっちを見てくる。

A「腹立つんだけど！超うざい！！」
英智「瀬名くんの口癖だね。そう言えば瀬名くんとも仲が良いんだっけ？」
A「信用、信頼してる親友だよ」
英智「よく彼と気が合うね」
A「別にそこまで変なやつじゃないよ。美意識高くて、ちょっと年下の男追いかけるだけのやつだし」
英智「それだけ聞くと色々と思うことはあるけれど？」
A「じゃあさ、英智。あんたはさ、私が道踏み外しそうになったら怒ってくれるの？」
英智「…それは…」

私の言葉に少し言葉を詰まらせる英智。
それを見て私は笑う。

A「怒れないでしょう？だって私達は双子で、でも立場は違うくって、だからこそ自由に生きて欲しいから」

それがどんな生き方になろうと全部認めたくなる。
それが私達だから。

A「泉は怒ってくれるよ絶対。だから親友なんだよ」

別に英智のことを信頼していない訳じゃない。
むしろ信頼してるし、いないと困る。

だけどお互いを肯定するだけじゃ、生きていく上では意味無いでしょ？