帝国戦-5 ページ25
音無春奈は呆然としていた。
張られた左頰がじんじんと痛む。
──なにもないのに
初めて、だった。
目を吊り上げ、抑えきれない激情を露わにした先輩を見たのは。
だって、いつも優しくて、一つ年上なのに誰よりも大人のような人間で、尊敬できる人で、それで、誰よりも余裕があるように見えた人、だったから。
だから、あんな風に怒るのは初めてだった。
走り去った先輩の背中を見ながらその場に突っ立っていると、声をかけられて肩が跳ねた。
「音無……」
「風丸先輩」
気不味そうな顔をした風丸先輩が音無を見ていた。その顔から音無は察する。
「その、聞いて……」
「悪い、わざとじゃなかった」
頭を下げた彼に慌てて手を振った。
「いえ、そんな！ その、私も……ちょっと頭に血が昇ってて」
「ああ、二人ともそこまで感情的になるなんてな。頰、大丈夫か？」
「そこまで強くは叩かれてないので……」
実際、少し赤くなるくらいだ。言ってはなんだけれど、先輩の力自体がそこまで強くはないから、放っておけばすぐに赤みは引くだろう。
何を言えばいいのか分からないらしい風丸先輩を前にして、少し気になった。
私は、今まで先輩は別世界の人間のように感じていた。頭がよくて情報収集も上手くて、それで性格も良いって、完璧人間じゃないですか。
情報収集まで取られたら、私の立つ瀬がないなあ、なんて。
その劣等感がじくじくと心の端から浸食していって、見ないフリも限界だった。
「……その、この前の、データの魔女の件、あっただろ？」
「ああ、試合中に先輩が暴露した……」
風丸先輩が苦笑する。
この前、御影専脳中との対戦で、迷いがあったキャプテンに叱咤したのは先輩だった。データの魔女の汚名だろうがなんだろうが知ったことか、と。ブラコンもここまでくるとすごいなあ、と尊敬の念すら抱いた件である。
「やっぱさ、遠慮があったんだろうな。リコは何でも押し殺して、隠す癖がついてるんだなって、この前の件で知った。だから、あいつが人に手をあげるなんて思いもしなかった。止めてやれなくて悪い」
「遠慮？」
その言葉に首を傾げれば、風丸先輩はまた顔を歪めた。
「その、お前に手をあげたことを擁護するつもりじゃない。女子の顔を張るのは良くないことだが……」
少し躊躇ってから風丸先輩は言った。
「俺とあいつは幼馴染だが……付き合いは九歳頃からだ。守が公園に連れてきた時に初めて会った」
「それって」
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黒牡丹(プロフ) - 焔さん» 好みと言っていただけて本当に嬉しかったです。書けないことになれば、とにかく頭の中に思い描いていたネタだけでも箇条書きにしてでも投稿はするつもりです。嬉しく優しいお言葉、本当にありがとうございます。 (2020年7月23日 12時) (
レス) id: 51616291f0 (このIDを非表示/違反報告)
焔 - 黒牡丹さん» レスありがとうございます。黒牡丹様が帰ってきてくださって、今の心境を教えてくださっただけでも嬉しいです。ありがとうございます。 (2020年7月14日 22時) (レス) id: 3ce071c9ce (このIDを非表示/違反報告)
黒牡丹(プロフ) - 焔さん» コメントありがとうございます。お話の続きを私自身が書くのは無理だと悟ってしまいました、申し訳ありません。なんとかして、彼女の物語を完結させたいと思います。どうか、よろしくお願いします。 (2020年7月13日 12時) (レス) id: cd13c32878 (このIDを非表示/違反報告)
黒牡丹(プロフ) - 夜さん» コメントありがとうございます。何度もコメントしてくださっていたのに、本当に申し訳ありません。私の手から離れるかもしれませんが、それでも一度思い描いた物語として皆様の元に届けたいと思っています。読んで頂いて、本当にありがとうございます。 (2020年7月13日 12時) (レス) id: cd13c32878 (このIDを非表示/違反報告)
黒牡丹(プロフ) - 翡翠さん» コメントありがとうございます。こんな形でのコメント返信申し訳ありません。せめて、物語として皆様の目に触れるようにしたいと思います。 (2020年7月13日 12時) (レス) id: cd13c32878 (このIDを非表示/違反報告)
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