帝国戦-4 ページ24
「大体、先輩は、ずるいじゃ、ないですか、私にないもの、全部持ってて」
──そもそもお前みたいな化物がいるからよ！
頭が痛い。
「頭が良くて、美人で、情報収集が上手くて、魔女の目もあって」
──私が何をしたっていうんだ？
頭が痛い。
「優しい家族がいて、優しいお兄ちゃんがいて」
──なんでだ、なんで分かってくれない！
頭が痛い。
「なんで先輩は、そんなに沢山幸せなものを持ってるんですか！」
頭が、いた、い？
足がもつれる。視界がぶれる。
「……持ってない……」
「……え？」
頭が痛い。痛い。記憶が見える。聞こえる。
これは誰の記憶だ？ これは私か？ 私の記憶か？
この怒りは、誰のものだ？
「ちがう、いや、ちがう、こんな記憶知らない、わたしは私だ。違う、さつきなんて知らない！ 私の兄は一人だけだ！」
「せん、ぱ」
頭がシェイクされて訳が分からなくなる。
私には何もない。ぐちゃぐちゃになる。知らない。何も分からない。
私が持ってる？ 何もかもを？
ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな！
頭脳は神様からだ、私のものじゃない。
魔女の目だって、私が手に入れた経緯などの記憶はない。
家族はたまたまだ、兄に拾われただけで運が良かっただけ。
私には何もない。
今、私という人格が"私である"という証明さえも。
「わた、しには」
記憶も、人格も、家族も、頭脳も、全てが、偶然で、私のものなんかじゃない。
「──なにもないのに」
目の前が真っ白になる。気付けば、右手の平がじんじんと痛んでいた。目の前には、少し片頬を赤くして茫然としている春奈ちゃんがいた。
私の痛む手に、彼女の赤い片頬。
ざっと顔から血の気が引く。
私は何をした。何をした？
守るべき後輩に、優しくすべき後輩に私は何をしている。
喉がからからに乾いている。掠れた声で私は叫んだ。
「ごめん、なさい！」
頭が痛い。手のひらが痛い。心が痛い。
何もかもから逃げ出すように、私は走り出した。
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黒牡丹(プロフ) - 焔さん» 好みと言っていただけて本当に嬉しかったです。書けないことになれば、とにかく頭の中に思い描いていたネタだけでも箇条書きにしてでも投稿はするつもりです。嬉しく優しいお言葉、本当にありがとうございます。 (2020年7月23日 12時) (
レス) id: 51616291f0 (このIDを非表示/違反報告)
焔 - 黒牡丹さん» レスありがとうございます。黒牡丹様が帰ってきてくださって、今の心境を教えてくださっただけでも嬉しいです。ありがとうございます。 (2020年7月14日 22時) (レス) id: 3ce071c9ce (このIDを非表示/違反報告)
黒牡丹(プロフ) - 焔さん» コメントありがとうございます。お話の続きを私自身が書くのは無理だと悟ってしまいました、申し訳ありません。なんとかして、彼女の物語を完結させたいと思います。どうか、よろしくお願いします。 (2020年7月13日 12時) (レス) id: cd13c32878 (このIDを非表示/違反報告)
黒牡丹(プロフ) - 夜さん» コメントありがとうございます。何度もコメントしてくださっていたのに、本当に申し訳ありません。私の手から離れるかもしれませんが、それでも一度思い描いた物語として皆様の元に届けたいと思っています。読んで頂いて、本当にありがとうございます。 (2020年7月13日 12時) (レス) id: cd13c32878 (このIDを非表示/違反報告)
黒牡丹(プロフ) - 翡翠さん» コメントありがとうございます。こんな形でのコメント返信申し訳ありません。せめて、物語として皆様の目に触れるようにしたいと思います。 (2020年7月13日 12時) (レス) id: cd13c32878 (このIDを非表示/違反報告)
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