06.轟音 ページ6
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『何、この音ーーーーー』
土手の上から見ると、よく見たら、寝そべる男の人と、もう一人、立っている人がいる。
ーーーーホームレス?
いやいや…
あの寝てる人にあの音が出せるはずはない。
ならあの男の子がきっと音を出してる張本人。
でも、橋の下だから良く見えない。
おそるおそる草むらをかけ降りる。
その時、つん、と小石に足をつまづいた。
『ギャーーーー!!!』
見事転がった私は、そのまま草の上にべちゃっと転んで、
『いたた…』
草をはたきながら立ち上がると、さっきのふたりが私を見つめていた。
「…何してんだ?お前」
「……………」
『い、いや、ははは…』
見たところ私と同い年くらいの男の子は、恥ずかしげにこっちを見てるけど、男の人、まあ年齢的にオジサンは、私を見てほほうと笑った。
「お嬢ちゃんーーーー恋の悩みだろ?」
『んなっ?!』
「図星か?ふ………俺のカンはよく当たるぜ」
「失礼なこと言うなよクソ親父!」
「うるせぇ!晩飯抜きにするぞ!」
「金がねーだけだろ!」
つかみ合う親子をよそに、私はなんだか目頭が熱くなって、
ぽろりと涙がこぼれてしまった。
『……………です』
「「………………ん?」」
『当たり、です』
.
.
なぜだか私は、御幸くんへの思いを、この見知らぬオジサンにばらしてしまうのである。
「なるほど……若いねぇ、お嬢ちゃん」
『そのお嬢ちゃんってのやめてくださいよ…』
「そういや名前は?」
『Aです。望月A』
「じゃあモッチーだ!」
『あはは、友達からもそう呼ばれてる』
ぱぁっと顔を輝かせる男の子ににこりと笑う。
『お2人は親子ですか?』
「そう!俺は轟雷蔵!そしてこいつは自慢の息子の雷市だ」
『とどろき?名字変わってますね…』
「車を3つ並べて轟だ。かっこいいだろ?」
『ああ、轟音の轟ですか』
頭の中で、「轟」の文字を思い浮かべる。
『って、そうだ!』
「どした?」
『さっき、このへんで、なんかぶん!!って音がーーそれで私、この土手降りてきたんですよ!』
「なんだ、そのことか」
雷蔵さんは、ニッと笑った。
「モッチーお前、野球よく見るんだろ?」
『まぁ…』
「なら見ていけ、」
雷市くんが、自信満々に笑ってバットを握る。
「そのミユキクンより、こいつのスイングはすげーぞ」
腰抜かすなよ、そう言って、轟親子はニカッと笑った。
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作者名:すた | 作者ホームページ:
作成日時:2015年12月6日 0時