34.笑顔 ページ34
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「あのっ、成宮くん、よかったらこれ…食べてください…」
「受け取れないや、ごめんね」
女子3人組からのチョコを断る、2月の二週目。
こんなにモテる俺だけど、生まれてこのかたバレンタインのチョコなんて受け取ったことない。
「Aちゃん?」
『おー鳴。そろそろ帰る?』
「あれれ?Aちゃん?今日が何の日か知ってるかな?」
『………………』
「さーさ!早く俺にチョコをくれなさい?」
こいつのを、のぞいて。
俺とAは違うクラス。
わざわざAのクラスまで行って、誰もいない教室で開いた手を差し出すと、ぽんと手の上にピンクの袋が乗った。
「さっすがA〜〜ありがと大事に食べるね♡」
『ったく…モテるんだからわざわざ幼なじみにせびる必要ないでしょーが…』
味は保証しませんからねー、言いながらかばんを肩にかけるA。
俺はこいつの後ろを歩きながらフッと笑う。
はい出ました鈍感発言。
普通あれじゃないの?
俺がほかの女子からのチョコを断る場面をたまたまこいつが見ちゃうとかさ、
そういうイベントは全く発生しないわけ?
もう少し俺の恋応援してもよくね?神サマがいるんならさあ
『ホワイトデーは3倍返しでよろしく』
「よし、俺の笑顔でお釣りが来るね」
『スマイルは0円が相場でしょ』
「俺のスマイルは高くつくの!」
ん、うま!珍しく!
帰り道。隣で袋を開けてクッキーを頬張ると、
Aが嬉しそうに、ちょっとだけ恥ずかしそうに笑う。
『褒めても何も出ないよー?』
「……………」
その笑顔見れるじゃん、バカ。
この帰り道がずっと続けばいいのに。
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作者名:すた | 作者ホームページ:
作成日時:2015年12月6日 0時