35.個性 ページ35
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グラウンドに、ザッと、薬師高校野球部、全員が並ぶ。
黒の縦ラインの入ったユニフォームを着た全員の前に、
ベンチに座る雷蔵監督が、ニヤリと笑って話す。
「以上、こいつらが明日の試合のスタメンだ」
試合前独特の、ぎしぎしした緊張感。
「しこたま野球を楽しめ!!以上!
今日はさっさと飯食って寝ろ!解散!!」
あぐらをかいた監督がそう言うと、
先輩の一人がびしっと手を上げて発言した。
「…監督!風呂は入らくてもいいんですか?!」
「飯はバナナ以外にも食っていいですか?!」
「監督!!何故この俺がスタメンから外れているのですか?!!」
『………………』
ぎしぎし……した…緊張感…………
「つーか雷市!今バナナ食うな!」
「監督!今日はアレやらないんすか?!」
「甲子園のアレ言ってくださいよ!
アレで決めなきゃ!」
さっきまでの雰囲気はどこに……
あきれ顔で同学年の真田と平畠を見ると、
真田はケラケラ笑ってて、平畠は私と同じようになんとも言えない顔をしている。
「うるせぇな!解散だっつってんだろてめぇら!!」
「えー監督あれやってくれないんすか?」
「監督!!まさか俺を明日出さないでおくのは準決勝にむけての温存…」
「ミッシーマうるせぇぞ」
「ミッシーマ元気だなーかははは!」
「だからミッシーマて呼ぶのやめろ!!」
まあこれもうちの個性、かな…ははは…
「夢の甲子園まであと5勝だけど。
今の気分はどう?望月さん」
まだギャーギャー言ってるみんなから離れたところで、真田に話しかけられる。
『………勝てるよ、みんななら。…私いつも以上に全力で応援するから』
「……………」
ぐっと拳を握りしめて言うと、真田はキョトンと私を見つめて、すぐにニッと笑った。
「先輩方ーーーー!!!
望月が今日はマッサージ1人10分延長するそうです!!」
『は?!そんなこと言ってな』
「そんなに俺の足がもみてぇか、来い望月」
「望月先輩!!俺の足をぜひ!!」
『いやえっととりあえずスタメン中心で』
「望月が泊まりでマッサージつけるってまじ?」
『話がでかくなってるし!!!』
すでに1回戦はコールド勝ち。
明日は2回戦。
明日勝てば、ベスト16。
薬師高校の快進撃は、
今この場所から、すでに始まっていたのです。
『もう終わりですってば!!』
「次俺な、望月」
『早く帰らせてー!!』
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作者名:すた | 作者ホームページ:
作成日時:2015年12月6日 0時